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ラマダーン-空腹とつきあう月

国立民族学博物館名誉教授・総合研究大学院大学名誉
教授。吹田市立博物館館長。専攻は宗教人類学・経営
人類学。

いま、イスラーム暦では断食月(9月、ラマダーン)のさなかです。この暦は平年354日の純粋な太陰暦ですから、平年365日の太陽暦とくらべると毎年11日ずつ繰り上がっていきます。今年は、西暦の710日からはじまり、88日に終わる予定です。あえて予定と書いたのは、月の姿を肉眼で判定しなければならないからです。見上げるのは西の空です。そこに新月を確認して、はじめて断食から解放されるのです。そしてイードルフィトルという断食明けの祭がおこなわれます。イスラーム教徒にとっては正月のようなお祝いで、官庁も学校も商店もみな休みとなります。人びとは家族、親族など、打ちそろって食事にあずかり、エジプトでは3日間つづきます。

ラマダーンのはじまりも新月によって判断されます。でも曇りや雨で月が隠れているときはどうするのでしょうか。その場合は予定日の翌日から断食月となります。今年の日本がそうでした。かつて日本では、東京タワーにのぼって西空を見つめていたこともあったようです。いまではマレーシアが断食にはいるのと歩調を合わせているそうです。

断食は日中だけの掟です。夜はもちろん食事にありつけます。では日中とは日の出から日の入りをさすのでしょうか。断食の場合、クルアーン(コーラン)にしたがうと、「白糸が黒糸から見分けられる」ときからとされています。つまり、夜明けの日の出直前からとなります。それまでに朝食をすませておかねばなりません。他方、日没は目視ではなく、新聞などに掲載されている時間を基準としています。この間、飲まず食わずで、厳格な人はつばも飲み込まないように注意しているそうです。

断食の目的は、食べ物の恵みを神に感謝すること、そして同時に飢えを体験することによって、金持ちも貧乏人も連帯感をもつこと、また欲望を断つことで信仰心が深められることにあるようです。ただし、病人や高齢者、妊婦や授乳中の女性などは除外されます。生理中の女性も断食する必要はありません。そのかわり、その埋め合わせを別の時期に適宜おこなうことが奨励されています。

   

国立民族学博物館に勤務していたとき、わたしの秘書をつとめてくれた女性のうち二人がイスラーム教徒でした。日本人ですが改宗してムスリマ(女性イスラーム教徒)になった人たちです。彼女たちはラマダーンになると勤務中は一切、飲食をしないのです。わたしや来客にはお茶を出してくれるのですが、とても気が引けました。日没の時間を見計らって軽食を取っていましたが、わたしもホッとしました。そして、いずれ来る夏至の頃のラマダーンを心配していました。なぜなら、日照時間が長いからです。いま、ちょうどその時期にあたります。ムスリマの彼女たちは夕方になると、時計を見ながら、空腹に耐えているにちがいありません。