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今回は山の日のルーツについて学んでみましょう! こよみの博士ひろちか先生
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日曜はじまり?月曜はじまり?

壁掛けカレンダーや卓上カレンダーは日曜はじまりが圧倒的に多く、手帳型の予定表は月曜はじまりが一般的であることにお気づきでしょうか。しかし、最近の傾向としては、手帳やネットでダウンロードするカレンダーだけでなく、壁掛けや卓上のカレンダーにも月曜はじまりが徐々に増えています。そのせいか、日曜はじまりはなぜか?、月曜はじまりの意味は?、といった疑問が新聞社にも寄せられています(「カレンダーはなぜ日曜日から始まるものが多いの?」『毎日新聞』2017年9月4日、東京本社版)。

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日曜・月曜はじまりの由来

日曜はじまりは日曜日が休日であることに由来します。その理由は言うまでもなく日曜日がキリスト復活の日とされているからです。キリストは金曜日に十字架にかけられ、日曜日に復活したというのが新約聖書の記述です。そのことから日曜日がキリスト教徒の安息日として選ばれました。カトリック教会では主日(しゅじつ)ともよび、主なる神をあがめる日としてミサがおこなわれるのです。ロシアでは復活日を意味するヴァスクリスェーニエが日曜日にあたります。それはキリストの復活や元気の回復を意識する日となっています。

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他方、月曜はじまりは会社員や学生などの便をはかったことに起因しています。家やオフィスに飾っているカレンダーとは異なり、手帳はたえず持ち歩くものです。そのため休日よりも週日に便利なことが肝要です。1週間のはじまりは月曜日で、金曜日まで働き、あるいは通学し、土日は週末という感覚です。その感覚に忠実なのが、月曜はじまりのカレンダーというわけです。

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月曜はじまりスケジュールの定着

西洋の近代化において労働と余暇が切り離され、週日に働き、週末に休むという生活パターンが定着しました。日本でも明治改暦にともなって1週間が7日の七曜が導入されました。しかし、国民の大半が農業を営んでいた時代は、週日と週末の区別はあまり意識されていませんでした。「サラリーマン」という呼び名が誕生するのは大正時代です。しかも、都会のごく一部の会社員をさすにすぎませんでした。戦時中は「月月火水木金金」という掛け声のもと土日や週末は有って無きがものだったのです。

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1960年代からはじまる高度経済成長は労働人口のサラリーマン化を加速させました。それにともない、月曜はじまり、日曜おわりの週刊スケジュールも都市生活者のなかに定着していきました。手帳の月曜はじまりはそれを象徴するひとつの典型例といえるでしょう。

月曜日はじまりで統一されたヨーロッパ

ヨーロッパではイギリスが1971年に国際標準化機構 ( ISO)の決議を採択し、月曜日を週のはじまりとしました。同様に、ヨーロッパでは週の開始を月曜日とする国が増えました。また、ヨーロッパでは週番号をつける習慣も広がっています。1年の第1週は1月に4日以上の日がある最初の週と決められています。換言すると木曜日を含む週が新年の第1週で、週3日以下だと前年の最終週に組み込まれます。こうして第何週の何曜日という言いかたが普通になされているのです。手元にあるヨーロッパのカレンダーを見ると、月曜はじまりで週番号のついたものが約半数を占めています。

イラスト5

いっぽうアメリカでは、壁掛けや卓上のカレンダーを見るかぎり、日曜はじまりが圧倒的多数です。世俗化したヨーロッパにくらべ、日曜礼拝にでかけるアメリカ人がいまでも多いことの反映でしょうか。南米のブラジルでも日曜はじまりが一般的です。ただし、ブラジルの日めくりで土日を1枚にしたものを入手したことがあります。オフィス向けの販売促進用でしたが、紙と印刷代の節約をはかった一挙両得のすぐれものでした。

最後に安息日についてもふれておきたいと思います。もともと旧約聖書の創世記にあるように、神が6日間で世界を創造し、7日目に休まれた、という伝承にもとづくものです。ユダヤ教では土曜日を安息日とし、カレンダーは日曜はじまりでも土曜日おわりが重視されています。ただし注意すべきは、ユダヤ教の安息日は金曜日の日没から土曜日の日没までであることです。

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日本カレンダー暦文化振興協会 理事長

中牧 弘允

国立民族学博物館名誉教授・総合研究大学院大学名誉教授。
吹田市立博物館館長。専攻は宗教人類学・経営人類学。

中牧弘允 Webサイト
吹田市立博物館Webサイト

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