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今回は「旧正月」について学んで見ましょう! こよみの博士ひろちか先生
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中国では太陽暦のグレゴリオ暦のことを公暦と称していますが、公暦の正月に対し、太陰太陽暦の農暦の正月のことを春節と言います。
西暦では1月下旬から2月中旬にかけて毎年移動します。旧正月という言い方は日本だけのことで、英語ではChinese New Yearという呼び名が一般的です。ちなみに、韓国や沖縄では新正、旧正と区別しています。

数年前、大連で春節をむかえたことがあります。多くの人は帰省してしまいますが、それでも花火や爆竹はにぎやかなものでした。
ホテルで安眠していたところ、12時前後に騒音で目が覚めました。カーテンを開けると、寝ながらにして花火を見ることができ、これぞ中国の春節、とひとり悦に入りました。これで魔は吹っ飛ぶにちがいない、と。翌朝、積もり積もった燃えかすを片付ける風景も実見しました。日本の花火大会の比ではありません。街中がいわば花火大会の会場と化すわけですから。

春節につきものなのは花火や爆竹だけではありません。大晦日には墓参りをします。
午前中にすませないといけないそうです。先祖を一緒に家に連れ帰るためです。
日本の盆では迎え火を焚き、先祖のために足元を照らしますが、中国では同行が基本です。明るいうちにしなければなりません。昼間には年画や春聯を門や玄関先に貼るのも欠かせない習慣です。年画は新年をことほぐカラフルな版画です。その起源は門神にあるとされ、桃や鯉など吉祥の象徴が描かれています。
たほう、春聯は願い事を文字で表現したものです。戸口の上に「吉祥如意」のような四字熟語が並び、左右に「迎喜迎春迎富貴」とか「平安二字値千金」などの願望が表現されています。とくに春聯は赤が基調ですが、これも魔よけの意味をもつ色だからです。

赤といえば、中国人のこだわりにはおどろかされます。赤のシャツを着、赤い靴下をはき、赤いジャケットを羽織るまではともかく、赤い下着まで身につける人がいます。
デパートにいくと、赤いパンツが堂々と売られています。赤ずくめのセットは年男や年女への魔よけの贈り物につかわれるのだそうです。

話をもとに戻すと、大晦日には「長寿果」といって昔はヒマワリやピーナツをよく食べたそうですが、大連でお邪魔した家ではヘイズル・ナッツに格上げされていました。
また、御餅ではなく餃子がハレの主食です。そして大晦日が家族団らんの日、元日は新年の挨拶の日です。
これらはいずれも男性(夫)中心になされ、男が厨房に立ち、食器洗いに精を出すのだそうです。2日は女性が主役で、妻方の実家を訪問する日に充てられます。そして3日以降が親戚まわりです。

中国における春節の休みは農暦の12月30日から1月5日までの7日間が基本です。公暦の元日よりも農暦の春節のほうが盛大に祝われているのです。また、農暦の15日は元宵節(げんしょうせつ)といって全国一律の祝日になっています。これは日本の小正月にあたり、満月の日です。
元宵節にも爆竹や花火がつきもので、赤い提灯や燈籠がいたるところに飾られます。地元の踊りも演じられ、団子を食べて、正月は終わりをむかえます。
餃子にはじまり団子に終わるのが大連の正月です。

日本でも中華街では春節を盛大に祝います。横浜の中華街では関帝廟でカウントダウンがあり、12時になると一斉に爆竹や花火が鳴り響きます。隣の中華学院では中国風のアクロバティックな獅子舞がくりひろげられることもあり、見せ場をつくります。
長崎にはランタン・フェスティバルと称する祭りもあります。今年は関帝廟に初詣をしました。ランタン・フェスティバルにも行こうと思っています。
到(倒)福を祈願して。

福の字を倒して福が到ることを祈願するおまじない

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日本カレンダー暦文化振興協会 理事長

中牧 弘允

国立民族学博物館名誉教授・総合研究大学院大学名誉教授。
吹田市立博物館館長。専攻は宗教人類学・経営人類学。

中牧弘允 Webサイト
吹田市立博物館Webサイト