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「こよみ」を名のる美容室やレストラン

今回はこよみの名前の美容室やレストランについて学んでみましょう! こよみの博士ひろちか先生
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通勤の途次に見える、マンション1階の駐車場がいつも気になっていました。そこに「カランドリエarking③・⑦」という表示があるからです。カランドリエとはフランス語でカレンダーのことです。しかし、T字路角の駐車場の側からは、カランドリエが何を指すのか、まったくわかりません。小ぶりな4階建マンションのありふれた駐車場です。しかも、信号待ちのときに横目に入るので、すぐに発進しなければなりません。

あるとき、ネットでカランドリエの検索をかけてみました。すると美容室であることが判明しました。表通りに面した美容室の名前だったのです。しかし、それを現認するのにも困難がともないました。なぜなら、アルファベットのデフォルメされた文字が繊細かつ美的につづられていて、運転を優先すると判別が困難なのです。さらに、美容室となると、男性には心理的な壁が立ちはだかってきます。

ようやく最近、本コラムのために、意を決して電話をかけてみることにしました。応対してくれた美容師さんによると、あいにくオーナーは仕事中で、夕刻にならないと手がすかないとのこと。そこで、あらためて電話をかけ直す旨を告げ、その間、ネット検索でカレンダーや暦の名前がついた各地の店舗に電話を入れ、その由来をたずねてみました。

まずは大阪のフレンチ・レストラン、カランドリエ。電話口に出た従業員によると、オーナー・シェフがフランスでの修業時代に、仕事の後、ふとカレンダーを見ていたら、カランドリエと書いてあって、ピンときて命名したとの由。肉やシーフード、あるいは野菜などの季節の食材をつかい、それを料理に表現することが職務なので、その名がつけられたとのことでした。おどろいたことに、開店間もないころ、美容室カランドリエのオーナーが客として訪れ、店名を借用することの了解をとられたとのことでした。フランス料理と美容室をつなぐきっかけがカランドリエという言葉だったのです。

大阪守口のホテル・アゴーラには日本料理「こよみ」がありました。電話でうかがうと、本社の社長たちが考案した名前であり、とくに二十四節気をもとに日本各地の旬の野菜や魚などの食材を心がけているとのことでした。興味ぶかいことに、入口には使用する実物の食材を展示し、節気ごとに入れ替えているそうです。「なにわの伝統野菜」である守口大根や吹田くわいについては、食事に行ったときにでも聞いてみましょう。

鳥取県米子市では特選仕出し料理に「味ごよみ」の名が付けられています。聞けば、広告宣伝会社の提案によるものらしく、言葉の響きが良く、季節の味を意味することから、季節ごとに内容も変わる仕出しにはうってつけだということでした。

もう一つ、東京渋谷にCalendaという美容室があり、オーナーと話ができました。彼によると、日めくりカレンダーから考案した造語であるとのこと。日めくりをめくるように、1日1日に思いを乗せて生きることをCalendaに託したそうです。お店には実際に日めくりが飾ってあるとのことでした。Calendaは「可憐だ」の意味もあるのか、というわたしの問いには「関係ない」という返事がかえってきました。

さて、美容室のカランドリエですが、夕方、ようやくオーナーと連絡がとれました。フランス料理カランドリエをまねたのは響きがいいこと、そして年間をとおしてヘアスタイルのおたすけをするという意味でつけたそうです。また看板とは別に標語のようにBrighten your day with calendrier(カランドリエで輝く1日をあなたに)と道路の壁面に掲示しているのは、お子さまの英会話の先生に考えてもらったとのこと。この日は、帰宅の途中、カランドリエに割り当てられた駐車場3番に車を止め、美容室に足を踏み入れ、オーナーにも会い、日本カレンダー暦文化振興協会のマニアックなオリジナル・カレンダーを進呈してきました。

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日本カレンダー暦文化振興協会 理事長

中牧 弘允

国立民族学博物館名誉教授・総合研究大学院大学名誉教授。
吹田市立博物館館長。専攻は宗教人類学・経営人類学。

中牧弘允 Webサイト
吹田市立博物館Webサイト