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数え年と満年齢-仏紀のちがいもしかり

今回は薮入りについて学んでみましょう! こよみの博士ひろちか先生
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年齢を数えるとき、いまでは満年齢が基本となっています。個人の誕生日を起点として年齢を重ねていくことは当たり前です。先回とりあげた100年カレンダーも誕生日を祝い、生存年数を確認するためのものです。しかし、日本で誕生日が個人にとって重要となったのはここ半世紀ぐらいのことです。なぜなら、それまでは数え年がけっこう幅を利かせていたからです。

数え年では、生まれた年を1歳とし、新年の元日から1歳ずつ加える方法をとっています。つまり正月に一斉に歳をとるわけです。除夜のことを年取りと言うのは、そのためです。極端な例では、大晦日に生まれた赤ん坊は翌日には2歳になります。

このような年齢の数え方は旧暦時代の慣習でした。明治改暦以降、西洋にならって満年齢が採用されましたが、民間では数え年がつづいていました。両者は併用して使用されていたのです。ようやく戦後、1950年12月22日になって、「年齢計算ニ関スル法律」が施行され、数え年が公的には姿を消しました。

しかし、数え年は息の根を止められたわけではなく、とりわけ死亡時に、享年(きょうねん)あるいは行年(ぎょうねん)という形で復活してきます。享年とは「(天から享(う)けた年の意)死んだ者がこの世に生きていた年数」「死んだときの年齢」(広辞苑)とされています。行年のほうは、「享年に同じ」(広辞苑)とされますが、仏教では「修行した年数」や「浄土に行く年齢」を意味すると説かれることもあります。近年では享年も行年も満年齢で墓石に彫られるケースが増えていますが、伝統的には数え年でやってきました。つまり、死亡時の満年齢よりも1歳、場合によっては2歳多いことがあるのです。

数え年が実年齢より1歳多くなることは理解できます。その理由としては、母の胎内にいた十月十日(とつきとうか)も勘定に入れるという説があります。しかし、なぜ2歳も加算されるのでしょうか。それは誕生日の目前に死亡した場合、誕生日を迎えたとみなし、さらに数え年の1年を加えるからです。仏教や儒教では長寿を尊ぶ習慣があるので、数が多いほうがいいのかもしれません。

3回忌や5回忌という場合も数え年がふつうです。七五三の祝いも江戸時代にはじまった関係で、もともと旧暦の数え年でしたが、明治以降、満年齢が主流となりました。

 

ところで、暦にも数え年と満年齢のちがいがあります。仏暦・仏紀は釈迦の涅槃=入滅とされる紀元前544年を基準とした年数をつかいますが、タイやラオスなどでは満で数え、中国、韓国、ミャンマー、スリランカなどでは数えでやっています。つまり、国によって1年のズレがみられるのですが、それは上座部仏教と大乗仏教のちがいという訳ではありません。日本ではこれだけ仏教が定着しているにもかかわらず、仏紀をお寺のカレンダーに記載している例を見たことがありません。

儒教の孔暦は孔子の生誕から数える生後紀元が一般的です。没年を基準とする孔子卒後紀元もありますが、例外的です。いずれも生誕や死亡の年を紀元としていますので、数え年ということができます。

われわれが使っている西暦=グレゴリオ暦はキリスト生誕紀元です。誕生の翌年を元年としていますから、満年齢の数え方とみなすことができます。ちなみに、実際の生誕は紀元前4年頃と推定されています。

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日本カレンダー暦文化振興協会 理事長

中牧 弘允

国立民族学博物館名誉教授・総合研究大学院大学名誉教授。
吹田市立博物館館長。専攻は宗教人類学・経営人類学。

中牧弘允 Webサイト
吹田市立博物館Webサイト