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今回は山の日のルーツについて学んでみましょう! こよみの博士ひろちか先生
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メソアメリカではアステカ文明と並び称されるのがマヤ文明です。古代マヤ文明はメキシコ南部からグアテマラ周辺にひろがり、暦法、神聖文字、建築や石彫美術などに特色ある文化が開花し、多くの都市が建設されました。古典期とよばれる繁栄の時代は紀元前3世紀頃からはじまり、紀元後9世紀末まで続きました。しかし、その後しだいに衰退し、16世紀になると、スペイン人の到来と征服があり、宗教文化もカトリックに飲み込まれました。とはいえ、先スペイン期の伝統はフォーク・カトリシズムとよばれる混合状態のなかで残存しています。暦もまた根絶の憂き目にあいましたが、ずっと維持してきた村もあり、近年になって復活させた村もあります。

マヤの暦法には循環する暦と直線の暦があります。今回は循環暦の260日暦と365日暦をとりあげます。まず260日暦ですが、これはアステカの「暦石」にも見られ、20の日と13の数字を組み合わせた周期となります(第97回参照)。20の日の名前と13の数字の読み方は言語グループによって異なりますが、仕組みは同一です。16世紀のマヤのユカテコ語では、日の名称はイミッシュ、イック、アクバル、カン、チクチャン、キミ、マニック、ラマット、ムルック、オック、チュエン、エッブ、ベン、イシュ、メン、キッブ、カーバン、エツナッブ、カワック、アハウと続きます。これと数字を組み合わせると、1イミッシュ、2イック、3アクバルとなり、13ベンで終わります。次の日は1イシュで、2メン、3キッブと続き、7アハウで20日の周期は終わりとなります。次の20日間の周期は8イミッシュから開始され、1アハウで終了します。このように20の日の名前と13の数字の組み合わせは最小公倍数の260日となります。

これはちょうど十干十二支(干支)の組み合わせが60通りであることと同じ原理にもとづいています。十干の甲乙丙丁戊己庚辛壬癸と十二支の子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥の組み合わせは甲子、乙丑、丙寅の順で進み、辛酉、壬戌、癸亥で終わります。

マヤでは260日暦は誕生日や儀式などの占いにもちいられました。イミッシュの日もイックの日も凶で、ユカタン半島に伝わる『チラムバラムの書』によるとイミッシュの日は「トルティリャ(トウモロコシのパン)、ニクテ(プルメリアの花)がその知らせ。ニクテがその木。流れ星がその知らせ。淫弄な人。不正直。争い好きな人。決断できない。疑い深い。」とあるそうです。

365日暦のほうは1年の出来事や儀式のためにつかわれました。20日からなるひと月が18で360日、それに5日がついて365日を1周期とする暦ができあがりました。月名はポープ、ウォ、シップ、ソッツ、セック、シュル、ヤシュキン、モル、チェン、ヤシュ、サック、ケフ、マック、カンキン、ムアン、パシュ、カヤッブ、クムク、ワヤッブの19です。最後のワヤッブは5日しかない月となります。月日の数え方は、0ポープ、1ポープ、2ポープであり19ポープで20日間のひと月が終了します。0の表記は月が「着座する」という文字であらわされ、便宜的に0にしているだけです。年末の5日間は0ワヤップから4ワヤップで完了します。

年末の5日という暦法はエジプトの太陽暦やエチオピア暦にみられ、フランス革命暦でもつかわれましたが、こちらのほうはひと月30日の12ヵ月というちがいがあります(第16回、第18回参照)。

マヤの365日暦は単独では使用されず、260日と対になっていました。このふたつの暦法を掛け合わせると、18980日周期の暦ができます。これはカレンダー・ラウンドとよばれ、およそ52年に一度の割合で同じ日がめぐってきます。それは人の一生にほぼ相当し、個人の出来事を記すには十分だったのです。

しかし、それ以上に長い歴史を記述するには不便だったので、長期暦が生み出されることになるのですが、それは次回にまわします。

【参考文献】
八杉佳穂「メソアメリカ諸文明(マヤ・アステカ等)の暦」岡田芳朗ほか編『暦の大事典』朝倉書店、2014年、36頁-39頁。

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日本カレンダー暦文化振興協会 理事長

中牧 弘允

国立民族学博物館名誉教授・総合研究大学院大学名誉教授。
吹田市立博物館館長。専攻は宗教人類学・経営人類学。
著書に本コラムの2年分をまとめた『ひろちか先生に学ぶこよみの学校』(つくばね舎,2015)ほか多数。

中牧弘允 Webサイト
吹田市立博物館Webサイト