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秋海棠(しゅうかいどう)
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秋海棠西瓜の色に咲きにけり  芭蕉

ひとくちにピンクといっても、さまざまな色があります。秋海棠のピンクは何色と表現したらいいのでしょう。私はこの句を知ってから、なるほど西瓜の色だと思うようになりました。西瓜の季節は終わってしまいましたが、夏の記憶がまだ脳裏に残っている頃、この花に西瓜の色をみている芭蕉の季節感に、深い共感を覚えて好きな句のひとつです。

日本の伝統色に照らし合わせれば、鴇色(ときいろ)に近いようにおもいますが、いまや天然記念物となってしまった鴇よりも、西瓜の方がより身近で、秋爽の中で過ぎ去った夏の日々をそっと辿っているかのような楽しさがあります。西瓜にも部分によって濃い色と薄い色がありますが、秋海棠もつぼみの部分は濃く、開いた花びらは薄い鴇色にみえます。

秋海棠はうつむき加減に咲きますが、ピンクの花の中央に、和菓子の「黄色しぐれ」のようなボンボン状の小さな満月を宿しています。足元を照らす小さな灯りのように、淋しくなっていく秋の大地にハッとするような華やぎを作る秋海棠。肌寒くなっていく中でみる、ピンクと黄色という甘い色の組み合わせがなんとも優しげで、可愛らしい花です。

彼岸花
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あちこちで、彼岸花が咲いています。毎年見事にお彼岸の頃に咲くので、この花はまさに「秋分の目印」といえるでしょう。

彼岸花はなんとも不思議な植物で、葉が茂るのはなぜか冬の間だけ。春には葉を枯らして、夏の間は地下茎の状態で過ごし、地上から完全に消えてしまいますが、秋口になると突然、にょきにょきと茎をのばして、赤い炎のような花をつけます。

むかしから畦道や土手、お墓の近くに咲いていることから、地獄花、幽霊花などの異名もありますが、あえてそのような場所に植えられたのは、強く張る根茎で土壌を強化し、球根にには毒性があるため、ネズミやモグラの侵入を防ぐ意味合いがあったようです。

別名の曼珠沙華(まんじゅしゃげ)は、サンスクリット語で「天上の花」の意。おめでたいことが起こる兆しに天から降ってくるという仏教経典から名づけられています。いずれにしても、この世のものではないような摩訶不思議な妖気を感じる花です。

開花期は十日余りと短く、この花が枯れるころには急に肌寒くなり、本格的な秋がやってきます。

燕去る
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夏の間から、夕方の空にどこからともなく集まってきた無数の燕が乱舞している姿をみかけます。空をごま塩のように埋め尽くす姿は壮観です。スイスイと泳ぐように飛んで、急降下したり、急旋回したり、長い旅路に備えて、飛行訓練をしているようにもみえます。子育てを終えた燕たちは次第に大きな群れを作り、葦原や林のねぐらで眠るようになります。春は単独飛行で一羽ずつ海面すれすれを飛んでくる燕たちですが、帰りは子燕を連れて、数千から数万羽の集団で帰ってゆきます。

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燕の渡りは夜。大きく旋回しながら、みえなくなるほど高く高く舞い上がり、陽が落ちるのを待って、南へ移動していきます。旅の途中の安全なねぐらは限られているため、この頃にみる大集団は同じ燕ではなく、北から南へと移動していく集団が次々と入れ替わっていることが多いようです。日本は「葦原の瑞穂の国」とよばれますが、葦原は燕たちにとっても重要なお宿。燕の渡りには、天候も関係するようです。天敵に弱い燕たちは、狙われることがないように、あえて雲におおわれた天候の悪い日を選び、小雨が降っていてもたくましく飛んでいきます。

鰯雲
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秋になると空が高く感じるのは、大気が乾燥して見通しがよくなるためですが、実際に高度の高い上層雲が出るためでもあります。真っ白なうろこ雲は、高度5千メートルから1万3千メートルの高いところに出現するため、空が高く感じられます。いわし、さば、さんまなどの収穫期を迎え、豊漁になることが多かったことから、いわしの大群に見立てていわし雲、さばの背中の斑点のようにみえるときは、さば雲ともいいます。

塊がもう少し大きなひつじ雲はいわし雲より低い空に浮かぶ中層雲で、わずかに灰色を含んで太陽をさえぎるような雲です。どちらも台風や低気圧が遠くにあるときに出ますが、いわし雲は2日後、ひつじ雲は翌日あたりに雨が降ることが多いそうです。夏の疲れがでやすく、肌が乾燥しがちな季節でもあるので、DHA,EPAが豊富な青魚など、良質な油を積極的に摂取することが理に叶った食事法です。

風の盆
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稲穂が色づいた頃、台風の季節がやってきます。立春から数えて二百十日目と二百二十日目は、昔から台風が多く、収穫直前の豊凶の境として恐れられてきました。二百十日は毎年9月1日にあたります。富山県八尾市の「おわら風の盆」は先祖供養と、荒ぶる風を鎮め、五穀豊穣を願う祭で、毎年9月1日から3日に行われています。

風の盆は、情趣あふれる静かな祭です。高橋治氏の小説『風の盆恋歌』で全国に知られ、「風の盆」は季語になっています。吟行にこられる方々も少なくなりません。哀調ある胡弓や三味線とともに、踊り手が幻想的な夜の町をひたひたと流して歩きます。

八尾は井田川の急斜面に並ぶ見事な石垣の上に築かれた町で、坂の多い町です。道の両脇には「雪流し」の水路があって、つねに水が流れています。日本の道百選に選ばれた石畳の美しい町並みもあります。期間中は家々が電気を消して、雪洞だけが灯ります。

サラサラと水が流れる音と虫の音に包まれながら、月を見上げていると、風にのってどこからか主旋律を奏でる胡弓の音色が聴こえてきます。町流しは連同志がぶつかると譲り合いながら道を曲がっていくのでどこを流すかはっきり決まっていません。あちこち探しまわるか、やってくるのを気長に待つしかありません。夜中から白々と夜が明けるまで、踊ります。

風の盆から恋風邪ひいて 夜毎おわらの夢をみる (おわら古謡)

風の盆に通い続けて、今年で十八年目になりました。初めての訪問は編集者時代に、『風の盆恋歌』の著者・高橋治氏と、写真家の稲越功一さんと同行した取材旅行でした。それからすっかり風邪を引いて、いまだに治りません。年に一度、越中おわら節の音色を聴かずにはいられなくなってしまいました。十八年も通い続けていると、いろいろなことがあります。亡くなられた方もありますし、病気でこられなくなる人もいれば、遠方に嫁いでいった人もいます。お互いに名前を尋ねたことはありませんが、毎年、無事を確かめ合うように会釈する人もいます。今年も無事にこられたということが奇跡のように感じられて、年を重ねる毎に有り難く感じます。

浮いたか瓢箪かるそに流るる 行先ァ知らねど あの身になりたや

おわら風の盆

稲

次回配信まで、こちらもあわせてお楽しみください。

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二十四節気と七十二候をその季節
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暦文化振興協会理事長中牧先生に
よる月2回の暦講座です。

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