冬至を迎えた朝、辺りを白く包み込むように、霧が立ち込めました。新たな始まりが、もうそこまで来ているような。松尾大社では、境内に来年の大絵馬が掲げられ、正月授与所が設置されていました。神社では、いよいよ正月に向かって、静かな緊張感が漂い始めています。洛北にある貴船神社では、山々に雪が降りかかり、清らかな白い世界が広がっている様子。寒がりな私も、雪が降るのは、なんだか嬉しく、心躍るもの。いちだんと障子窓が明るくなった朝、さっと障子を開けると、あたり一面銀世界―。この季節、そんな朝を迎えるのを、心待ちにしています。

雪、月、花…自然が生み出すご褒美を愛でる酒は、古くから楽しまれてきました。兼好法師は「徒然草」のなかで、酒を飲むことの戒めを大いに説きつつ、それでも捨て難いこととして、「月の夜、雪の朝、花の本にても、心長閑に物語して、盃出したる、万の興を添ふるわざなり。」と書き綴っています。自然の美しさを前にして、酒を飲むことは、神様と一体になるような酔いの効能なのかもしれません。

昨年、越後湯沢を訪ねたとき、車窓から流れる雪景色に圧倒されたことを思い出します。これまで見たことない程、高く積みあがった雪の壁。雪の室にすっぽりと包まれた地で醸されるお酒は、雪解けの清らかな水を彷彿とさせる透き通った味わいでした。車窓を雪見窓にして一杯頂くのも、旅の醍醐味。酒蔵で買ってきたばかりのお酒と共に、地元の風情を楽しむ特等席です。流れる景色に酔いしれながら、旅を振り返る雪見酒となったのでした。

雪のような白さのにごり酒は、雪見酒にもぴったり。古来、日本で神様に供えられてきたのは、にごり酒でした。透明な澄んだお酒は、このにごりを濾したものなので、それよりも前に、にごり酒があったと考えられます。現代では、さらりとした薄にごり、とろり濃厚なにごり酒、新酒ならではの微発泡が口の中で弾けるものまで、実に豊かな味わいが揃います。甘さのきいたものはデザート酒としてもおすすめ。また、燗酒にしてみると違った味わいが楽しめます。ちなみに「どぶろく」は、もろみを濾さずにそのまま飲むお酒なので、一般的な「にごり酒」とは別に分類されています。一度でも濾されたものは「清酒」となり、にごり酒のほとんどが清酒に含まれています。

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