足元のセンス・オブ・ワンダー
冬芽

冬のセンス・オブ・ワンダーといえば、なんといっても冬芽です。裸になった枝先をよくみてみると、その多くが小さな芽をつけています。本格的な芽吹きは春になりますが、すでに晩秋にはそれぞれの芽をつけ、そのまましっかりと固く締まって、寒い冬をのり越えていきます。なかには毛が生えているものもありますし、芽鱗(がりん)といって、幾枚も鱗のように巻いて、重ね着のように芯を守っているものもあり、形もさまざま。いのちのリレーは神秘的です。

写真1

なんとも美しいですね。肉眼ではみえないほど小さなものもありますが、私はつねにマクロレンズを持ち歩いていますので、カメラを向けてみると、とんでもなく美しいものを見つけたような気持ちになります。現在は100円ショップでもスマホ用のクリップ式マクロレンズが売られていますので、ぜひのぞいてみてください。これも芽鱗がはっきりとわかりますね。

これはアブラチャンの冬芽。左右が花芽で、中心が葉芽です。

写真2

よくみると、こんなにフサフサの毛が生えているものもあります。毛皮のコートですね。

写真3

冬は何もかも枯れ果てているように思われがちですが、じつは生まれたいのちをしっかりと抱え、守っている季節でもあるのです。

冬の語源は「殖ゆ」「振ゆ」で、魂(生命力)が増え、粒子が震えて発動することを意味しています。冬至を含む霜月は、生気が衰えるこの時期に「魂振り」をする里神楽が行われるため、神楽月(かぐらづき)とも呼ばれて入ります。

冬ざれの景色の中にも生き生きとした小鳥たちもよく目につきますし、日本にやってきた水鳥たちは恋の季節を迎えて、雄の羽が鮮やかな色に変わっていきます。そして木々の芽はしっかりと命を宿して、新しいいのちの発動を隠し持っています。

ところで、みなさんが動物のモチーフで親しまれている十二支の漢字は元々、十二年に一度、一周する木星の運動から数を数えるためにつけられたもので、本来は動物とは関係がなく、草木の一年の様子、自然界のサイクルを表わすものだったようです。以下が十二ヶ月の植物の様子です。

十二ヶ月の植物の様子

いかがでしょうか。今は西暦では12月、和暦では冬至を含む十一月(霜月)に相当しますので、「種子の中に新しい命が芽生える月」と考えられていたわけです。十二月(師走)は「萌芽が生じてはいるが、伸びきれない月」。西暦では1月にあたり、二十四節気では小寒、大寒にあたるいちばん寒い季節となります。

2月に入り、寒さの緩みが出てくると、固かった蕾はにわかにふくらみ始め、いち早く咲く梅の枝先が一斉に赤くなって、遠くからもわかるようになります。

最後に冬芽の代表格としてよく知られているのが、このオニグルミやサワグルミです。愛らしい羊の顔は、大人にも大人気。出会ったら、やあ、こんにちは、と思わずあいさつしたくなるような森の小人たちです。

写真4
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高月美樹 和文化研究家
高月美樹 和文化研究家

月刊婦人雑誌の編集を経て独立。96年から人生に起こるシンクロニシティを探求し、日本古来の和暦に辿り着く。2003年より地球の呼吸を感じるための手帳、「和暦日々是好日」を製作・発行。月と太陽のリズムをダイレクトに受け取り、自然の一部として生きるパラダイム・シフトを軸に講演、執筆、静かにゆっくり活動中。

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