七十二候がおとずれるたび、日本の細やかな
季節の移り変わりを旬のお話とともにお届けします。

桐は初夏に薄紫色の美しい花を咲かせ、夏の盛りを迎える頃、卵形の実を結びます。古くから桐は神聖な木とされ、日本国政府の紋章(五七の桐)に使われ、政府の発行する五百円硬貨の表面にも桐の花が描かれています。

  • 夜空に打ち上がる花火は、夏の風物詩。7〜8月には各地で花火大会が開催され、幻想的な情景を楽しもうと多くの人で賑わいます。大輪の花のように大きく開く「割物 わりもの」、キャラクターや動物などを描く「型物」、いくつもの花火を組み合わせて連続で打ち上げる「スターマイン」など種類は様々。

  • 7月の最終土曜日に開催される隅田川花火大会は、東京の夏の一大イベント。その歴史は古く、江戸の八代将軍徳川吉宗が大飢饉の犠牲者を弔うために水神祭を行った際、花火を上げたのが起源といわれています。大阪では天神祭の花火大会が有名です。天神祭は日本三大祭のひとつで、祭りの終盤に奉納花火大会が行われます。例年約130万人が訪れ、大阪の夏の夜を熱気で包みます。

  • 花火大会のとき、「たまや〜」というかけ声を聞いたことがあると思いますが、実はかけ声には「たまや〜」と「かぎや〜」のふたつあり、これは江戸時代の花火屋「玉屋」と「鍵屋」が由来になっています。隅田川花火大会の前身である「両国の川開き」が江戸時代に行われていた際、隅田川で花火を打ち上げていたのが玉屋と鍵屋でした。両者は花火の技を競い合い、これを見物人が応援するためのかけ声が「たまや〜」と「かぎや〜」でした。
    隅田川で美しい花火を競演していた玉屋と鍵屋ですが、玉屋は失火により江戸を終われ、廃業してしまいます。鍵屋はその後も脈々とその技と情熱を受け継ぎ、現在まで15代に渡って営業を続けています。
    ですが、かけ声で「かぎや〜」ってあまり聞いたことがありませんよね。失火で江戸を追われ廃業した玉屋に由来した「たまや〜」のかけ声が多いのはなぜでしょうか。
    そこには語呂の良さ、花火の技が優れていたことなどが挙げられますが、なにより実力を持ちながら一代でその姿を消した花火屋に対する江戸っ子の愛情が、「たまや〜」のかけ声を現代に残しました。

    夏の花火大会はとても華やかで、賑やか。見る人に感動と楽しい思い出をくれます。
    今年からは、「たまや〜」「かぎや〜」と、ふたつのかけ声を「ドーン」と咲く花火にかけたいですね。

※七十二候は年により変動します

illustration:みやしたゆみ

暦生活フォローワー
暦生活ツイッター暦生活インスタグラム

ページトップ