桃の花が咲くころ。昔は花が咲くことを笑うと表現しました。桃の花にぴったりな、かわいい言葉ですね。鮮やかな桃の花が咲くと、景色はより春めいてきます。
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奈良の東大寺二月堂で、3月1日から14日まで行われる修二会(しゅにえ)。奈良時代からはじまり、1200年以上も続く春迎えの代表的な神事です。正式には「十一面悔過(じゅういちめんけか)」といい、日常の過ちなどを十一面観世音菩薩に懺悔します。修行僧が二月堂で振り回す籠松明の火の粉を浴びると、厄災が祓われるといわれています。
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「お水取り」は、魚を採っていたため二月堂への集まりに遅れた遠敷(おにゅう)明神が、お詫びとして二月堂のほとりに清水を湧き出させ、観音様に奉ったという話が由来とされています。
3月13日の午前2時頃に儀式がはじまり、松明に誘導された練行衆(れんぎょうしゅう)が、杖とホラガイを手にお香水(こうずい)が収められている閼伽井(あかい)に降り、本堂仏前にお供えする1年分のお香水を汲み上げます。この閼伽井には「お水取り」を行う人以外入れないそう。
お香水が無事に納められると、練行衆は再び二月堂に戻り、悔過作法を行います。 -
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お水取りで納められるお香水はどこから来ているのでしょうか?
お香水の水源は、福井県小浜市とされ、福井県の若狭神宮寺では、毎年3月2日に「お水送り」の儀式が行われます。その際、遠敷川に注がれた水が若狭井に通じ、10日後の東大寺二月堂の「お水取り」で汲み上げられるといわれています。
このお香水ですが、東大寺二月堂で組み上げられた後は甕(かめ)に納められます。その内のひとつは「根本香水」といい、毎年追い足ししてたくわえられているそう。この甕には、これまでの「お水取り」の歴史がつまっているのですね。
それとは別に、「次第香水」と呼ばれ、その年に汲まれた新しいお香水を納める甕があります。前年のお香水は全て汲み出されますが、汲み出された少量のお香水は、二月堂の湯屋の井戸水で割られたあと、参拝者にも分け与えられるそうです。
※七十二候は年により変動します
illustration:みやしたゆみ