七十二候がおとずれるたび、日本の細やかな
季節の移り変わりを旬のお話とともにお届けします。

やさしく照らす陽光のもと、ほんのりと薄緑に色づく草木が見られるころ。寒い冬を耐え忍んだ新しい命が、春の訪れを感じいっせいに芽吹き始めます。

  • 3月3日の上巳の節句に、女の子の健やかな成長を願う雛祭り。雛人形を飾り、菱餅やひなあられなどをお供えします。もともとは中国で行われていた「上巳」という行事と、日本で古くから行われていた穢れなどを祓う禊の行事などが融合し、今の形になりました。ひな祭りは別名「桃の節句」ともいいます。

  • 上巳の節句とは五節句のひとつで、雛祭りの由来とされています。
    中国では古来、3月はじめの巳の日を「上巳」とし、水辺で身を清め、穢れを祓う力を秘めているとされる桃のお酒を飲み邪気を祓うならわしがありました。
     

    平安時代に日本に取り入れられ、宮中では和歌を詠み、酒を飲む「曲水の宴(きょくすいのえん)」が行われました。やがて曲水の宴はすたれましたが、上巳は穢れを祓う日として、貴族の間で定着していきました。この「上巳の祓」では、形代(かたしろ)と呼ばれる人形に穢れを移して川や海に流しました。これが、現在でも残る「流し雛」の起源となっています。
     
    この頃、平安貴族の子どもの間では「ひいな遊び」と呼ばれるままごとのような人形遊びが流行っていました。上巳と「ひいな遊び」が結びつき、技術の発展とともに人形は流すものから飾るものになり、江戸時代以降、庶民の間でも雛祭りとして行われるようになりました。

  • 雛祭りでは、女の子の健やかな成長を祈り雛人形を飾りますが、人形や花嫁道具の他に「桜」と「橘」の木花を飾ります。左近の桜、右近の橘とも称されますが、なぜこの2つの木花を飾るのでしょうか。
    古くから、桜と橘には「邪気払い」「魔除け」の力があるとされ、特に常緑樹である橘は「不老長寿」の象徴とされてきました。人形だけでなく、雛飾りの由来にも目を向けてみると、より深く楽しむことができそうですね。

  • 「曲水の宴」は、平安時代にかけて宮中や貴族の邸宅で行われていた雅やかな歌会で、現在も京都の北野天満宮や福岡の太宰府天満宮で行われています。「曲水」は、庭園などを曲がりながら流れる水のこと。曲水に沿って色とりどりの平安装束を身につけた歌人が座り、歌題にちなんだ和歌を短冊にしたため、上流から流れてくる酒杯を飲みます。全員が酒杯を飲み終えると、最後に神職によって詠みあげられ、神様に奉納されます。
     

    ※神社やお寺によって方法は異なります。

※七十二候は年により変動します

illustration:みやしたゆみ

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