綿の実を包む花の萼(がく)が開き始めるころ。
萼がはじけ、中からふわふわした綿毛が飛び出してきます。この綿毛を紡ぎ、衣服などで使われる木綿の糸や布がつくられます。
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日本には、古くから伝わる美しい色が数多く存在します。その色数は1000を超えるといわれ、多くは植物や動物、季節ごとに移ろう自然現象からとられました。「菜の花色」や「茜色」、「鉄紺」や「山吹色」など、日本人の繊細な感性を映した、趣のある名前が付けられています。
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秋は夕暮れがとても美しい季節です。春は曙といいますが、秋は茜色の夕暮れ。茜色に染まった空を「茜空」、茜色の雲を「茜雲」といいます。茜色は、山野に自生していたアカネという植物の赤い根っこによって染められた色。アカネは藍にならぶ最古の染料のひとつとされ、人々に愛されてきました。
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「秋の七草」のひとつとして、秋風に優しくゆれるオミナエシ。透き通るように美しい黄色は、そんなオミナエシの花の色からとられました。「女郎」は身分の高い女性の敬称として古くから使われ、気品や優雅さを感じさせる様子が女性にたとえられてきました。
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青みのある美しい紫色。「秋の七草」のひとつとして数えられるキキョウの花の色です。キキョウは夏の終わりから秋にかけて青紫色の花をつけ、万葉集に詠まれた時代では「あさがお」とも呼ばれていたそうです。桔梗色は平安時代に生まれた色ですが、江戸時代に入ってもその人気は高く、たくさんの人に愛されてきました。
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落ち葉の色からとられた「朽葉色」のバリエーションのひとつで、地面に舞い散った落ち葉の中でも、赤く紅葉した落ち葉の色です。秋らしい美しい色で、平安時代には貴族が秋に着用する装束の色に使われました。赤朽葉の他にも「黄朽葉」や「青朽葉」など様々な色があり、「朽葉四十八色」といわれるほど。
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栗皮のような、黒みがかった茶色。「栗色の髪」や「栗毛」など、人の髪や動物の毛を言い表す親しみのある色です。秋の味覚には欠かせない栗ですが、はるか昔、縄文時代から人々の生活に身近な木の実として親しまれてきました。「朽葉色」と同じく、栗色には「栗皮色」や「栗皮茶」など色のバリエーションが存在します。
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※七十二候は年により変動します
illustration:みやしたゆみ