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今回は山の日のルーツについて学んでみましょう! こよみの博士ひろちか先生
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日曜はじまり?月曜はじまり?

年号と元号はほぼ同義でつかわれています。たとえば『広辞苑』には年号(元号)とは「年につける称号」であり、「漢の武帝の時(西暦紀元前140年)に『建元』と号したのに始まる。日本では645年に『大化』と号したのが最初」と説明されています。しかし、年号と元号には微妙なちがいもあり、両者は時に区別してあつかう必要があります。

明治天皇が即位し改元がおこなわれた時、『明治天皇記』には天皇がくじを引き「年号の字を聖択したまふ」とあります。その字は「明治」でした。つまり、漢字の名称を冠したのが「年号」です。これに対し、代始め(即位)から数えるのが元号です。元は元年の意味です。現行の法律は「元号法」と言います。明治22年の「皇室典範」でも明治42年の「登極令」でも「元号」がつかわれました。

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日曜・月曜はじまりの由来

漢の武帝は5回の改元をおこないました。それらは初元元年、初元二年…、二元元年…、三元元年…、四元元年…、五元元年…と称されましたが、天瑞(祥瑞)をもって命名すべしという臣下の意見を取り入れ、初元を建元、二元を元光、三元を元朔、四元を元狩、五元を元鼎と改称しました。これが「年号」のはじめとなります。

イラスト2
月曜はじまりスケジュールの定着

他方、日本では中国年号を知りつつも邪馬台国や倭の五王の時代には独自の年号をたてることはなく、聖徳太子ゆかりの「法興」年号も私年号とみなされています。公年号としては『日本書紀』にみえる孝徳天皇即位元年(645)につけられた「大化」が最初とされています。年号が継続的にたてられるのは律令体制が整備された「大宝」(701)以降ですが、「大化の改新」で知られる「大化」をもって日本年号の最初とする見解が通説となっています。

大化から平成にいたるまで、日本年号は247を数えます。これには国家が分裂した南北朝時代の年号も含まれます。1370年以上も日本は年号を使用してきただけでなく、清朝の滅亡とともに、世界で唯一、長期的かつ持続的に年号をつかう国となりました。

イラスト3
月曜はじまりスケジュールの定着

年号は紀年法の一種です。中国の干支やマヤの長期暦もそのひとつですが、建国紀元や王制紀元のような政治的紀年法もあれば、ユダヤ暦の天地創造紀元やキリストの生誕紀元のような宗教的紀年法もあります。年号はいちおう王制紀元に分類できますが、即位にともなう代始改元だけでなく、祥瑞や災異によっても改元することが頻繁にありました。また辛酉革命理論にもとづく改元もおこなわれました。しかし肝心なことは、改元理由にくわえて、帝王(天子や天皇)が「勅定」することにありました。

明治天皇は年号の候補のなかからくじを引いて決定しましたが、大正天皇と昭和天皇は枢密院の議決にしたがい即位の直後に勅定をおこないました。平成への改元の際は「元号法」(昭和54年制定)にもとづき、有識者会議の議を経て3案が1案に絞り込まれ、閣議決定の後、新天皇の允裁(いんさい)を受けた「元号を改める政令」が即位の当日に公布されました。小渕恵三内閣官房長官による新元号の発表はテレビ映像を通してわれわれのよく知るところとなっています。

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日曜・月曜はじまりの由来

東アジアにおいて、年号や元号に準じた数え方は台湾や北朝鮮にも見られます。台湾では「民国何年」という1912年の中華民国を紀元とする中華民国暦が使われています。他方、北朝鮮では金日成の3周忌にあたる1997年から金日成の生誕(1912年)を紀元とする主体年号が採用されています。主体とは金日成のとなえた思想を指し、政治の自主、経済の自立、国防の自衛を強調するものです。中華民国暦は日本の皇紀や韓国の檀紀のような建国紀元であり、主体年号は亡くなった指導者の生誕紀元であって、即位や勅定の伝統を引く年号とはかなり異なった性格を有しています。

余談ですが、ないもののたとえのひとつに「元年の暦」があります。昭和元年や平成元年はそれに当たりました。しかし、平成につづく元号のカレンダーはそのたとえを無意味化するかもしれません。

【参考文献】
金セッピョル「北朝鮮」中牧弘允編『世界の暦文化事典』丸善出版、2017年、36頁。
所功『年号の歴史―元号制度の史的研究』雄山閣出版、1988年。

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日本カレンダー暦文化振興協会 理事長

中牧 弘允

国立民族学博物館名誉教授・総合研究大学院大学名誉教授。
吹田市立博物館館長。専攻は宗教人類学・経営人類学。

中牧弘允 Webサイト
吹田市立博物館Webサイト

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