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手話カレンダー こよみの博士ひろちか先生
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在日外国人の増加と比率

2018年6月現在、在留外国人は2,637,251人です。この時点での日本の総人口はおよそ1億2651万人ですから、外国人は約2.1%となります。外国人の上位を占めるのは中国人741,656人、韓国人452,701人、ベトナム人291,494人、フィリピン人266,803人、ブラジル人196,781人、そして意外にもネパール人85,321人という順になります。さらにアメリカ、タイ、インドネシア、ペルーが5万人前後となっています。

イラスト1

在日外国人は1980年代後半から1990年代にかけて急増しました。1990年に「出入国管理及び難民認定法」(略称:出入国管理法)の改定があり、南米のブラジルやペルーからの日系人の逆流現象がおこりました。いわゆるデカセギです。他方、コリアンのニューカマーも新宿区などに集住するようになりました。中国や台湾からも移住者は増え続けていますし、東南アジアのベトナムやフィリピンからも日本をめざして来る人が多数みられます。最近はネパール人の増加が目を引きます。そしてこのたび、外国人受け入れ枠のさらなる拡大をめざす「出入国管理法」が改正され、外国人と接触する機会も確実に増えていくことでしょう。

多様な暦を生きる在留外国人

在留外国人は国籍や文化が異なるように、使用するカレンダーにもちがいがみられます。国や地域、宗教や文化によって暦法が異なるからです。もちろん日本の暦法や祝祭日の制度にあわせる必要もあります。したがって、彼ら/彼女らは二重、三重の暦を生きなくてはなりません。これをバイ・カレンダーとかマルチ・カレンダーと称し、多様な時間を使い分ける指標とすることがあります。バイやマルチのカレンダーは在日外国人にとどまりません。国家が公認する統一した暦があっても、それと異なる暦法を日常生活でもちいることはけっして珍しいことではありません。中国では農暦(太陰太陽暦)で春節を祝っていますし、日本でも旧暦(太陰太陽暦)で中秋の名月を楽しんだりしているわけですから。

イラスト2

中国や台湾の農暦、日本や韓国の旧暦はいずれも太陰太陽暦ですが、太陽暦の西暦と共存しています。日本以外は農暦も旧暦も公認された暦法ですが、日本は西暦のみが正規の暦法であって、旧暦は日陰者のような存在となっています。ところが、インバウンドで台湾をはじめ中国、香港、韓国はもとより、ベトナムなど東南アジアからも多くの観光客が春節の休暇に押しよせてくるようになりました。これまでは日本人相手に西暦一本で商売が成り立っていましたが、インバウンドの増加にともない旧暦にあわせた祭りや商慣行が定着しつつあります。

日本で開催される春節

他方、華人が集住する横浜や神戸、長崎でも春節の行事が近年、盛大におこなわれるようになりました。長崎のランタンフェスティバルは春節(新月)から元宵節(げんしょうせつ、満月)までの半月にわたって繰り広げられ、100万人の観光客を当て込んでいます(本コラム第74回参照)。横浜中華街でも関帝廟(かんていびょう)と媽祖廟(まそびょう)で春節カウントダウンがおこなわれ、爆竹や花火の鳴り響く音を聞きながら新年を迎えます。春節の当日には獅子舞があり、中華街を練り歩きます。休日や祝日には「娯楽表演」と銘打った獅子舞や雑技などが山下町公園でおこなわれ、「祝舞遊行(しゅくまいゆうこう)」という祝賀パレードも実施されます(2019年の場合は2月16日(土))。横浜の春節の最後を飾るのは媽祖廟の「元宵節燈籠祭(とうろうさい)」です。メッセージ燈籠に書き込まれた人びとの願いが天に届くように奉納舞が披露されるとのことです。

イラスト3

春節は移動祝日ですが、イースター(復活祭)も年ごとに祭日が異なる移動祝日です。それは春分のあとに来る満月の次の日曜日と決められていますが、カトリック、プロテスタントと東方正教会ではふつう日にちが異なります(本コラム第5回参照)。イスラームのラマダーン(断食)も毎年11日ほど繰り上がっていきます(本コラム第11回参照)。次回からは国内の在留外国人向けに発行されるカレンダーをとおして、順次その暮らしぶりを紹介していきたいと思います。

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日本カレンダー暦文化振興協会 理事長

中牧 弘允

国立民族学博物館名誉教授・総合研究大学院大学名誉教授。
吹田市立博物館館長。専攻は宗教人類学・経営人類学。

中牧弘允 Webサイト
吹田市立博物館Webサイト

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