
国立民族学博物館名誉教授・総合研究大学院大学名誉
教授。吹田市立博物館館長。専攻は宗教人類学・経営
人類学。
イスラーム暦の曜日が金曜日をのぞきアラビア語の数詞であるように、現代中国でも日曜日以外は星期一(月)、星期二(火)、星期三(水)、星期四(木)、星期五(金)、星期六(土)です。日曜日は星期天ないし星期日です。スラブ系の暦も基本的には数詞ですが、ロシアの水曜日はスレダー(真ん中)となっています。ベトナムでは週のうち2日だけ、すなわち月曜日と土曜日がそれぞれ第2日、第7日とよばれています。ブラジルを含むポルトガル語圏でも月曜日は第2日(segunda feira)、火曜日は第3日(terca feira)、水曜日は第4日(quarta feira)、木曜日は第5日(quinta feira)、金曜日は第6日(sexta feira)です。ただし、土曜日はサバド(Sabado安息日)、日曜日はドミンゴ(Domingo主の日)となっています。


安息日はユダヤ教に起源をもち、主の日はキリスト教の観念です。旧約聖書の創世記の冒頭に神が6日間で天地を創造したくだりがあります。そして7日目には休んだので、これが安息日(シャバット=第7日)となったのです。ユダヤ人はエジプトでの奴隷状態を脱するため、モーセに導かれて出エジプトをはたしたわけですが、その忌まわしい記憶を嫌って、古代エジプトの最初の日であった土曜日を最後にもってきたといわれています。他方、主イエス・キリストが復活したのは日曜日とされ、カトリックの勢力が強いポルトガル語圏では主の日という呼び名が定着しているのです。
しかし、キリスト教世界でも日曜日を「太陽の日」という国々があります。英語のSundayやドイツ語のSonntagがその例です。七曜が定着した古代ローマでも日=太陽(ソル)からはじまり、月(ルナ)、火星(マルス、戦いの神)、水星(メルクリウス、商業の神)、木星(ユピテル、主神)、金星(ウェヌス、愛と美の神)、土星(サトゥルヌス、農業の神)となっていました。曜日は天体の日月星辰の名を冠していたのです。これは古代メソポタミアの伝統をひくものでした。ちなみに、そこでは「7」が聖数で、旧約聖書もその観念を採用したのです。その逆ではありません。


ところが、英語の曜日にはローマの土星と日月だけでなく、ゲルマン神話の神々が名を連ねています。火、水、木、金はそれぞれチュール(勇気の神)、オーディン(万物の父=最高神=主神)、トール(戦いの神)、フリッグ(主神の妃=愛の女神)の神名を語源としているからです。
日本ではすでに藤原道長の『御堂関白記』に七曜がみられます。空海らがもたらした『宿曜経(すくようきょう)』の七曜が吉凶の占いに使用されていたからです。曜日としての七曜ではありません。明治改暦までは、月の満ち欠けにもとづき、朔日(ついたち=月立)とか、二十日や晦日(みそか=三十日)などの数字で日にちをあらわしていたのです。くわえて古代中国にならい10日ごとの区切りである旬がつかわれていました。上旬、中旬、下旬の旬です。
