
国立民族学博物館名誉教授・総合研究大学院大学名誉
教授。吹田市立博物館館長。専攻は宗教人類学・経営
人類学。
日本における月名は西暦ではそっけなく基数がもちいられています。しかし、旧暦ではそれぞれに意味のある睦月、如月、弥生、卯月、皐月、水無月、文月、葉月、長月、神無月、霜月、師走がつかわれていました。それは俳句にかぎらず、いまでも折にふれてよみがえる月名です。


西暦では1月から6月までは古代ローマの神名に起源をもっています。たとえば1月(January)はヤヌス、すなわち双面の神です。しかし、7月(July)はユリウス暦への改暦を断行したユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)の名をとったし、8月(August)は閏日の挿入を3年ごとから4年ごとに変更した初代ローマ皇帝アウグストゥスにちなんでいます(「こよみの学校」第3回参照)。9月以降は3月が年始であった古代ローマの伝統をのこし、7番目の月(September)から10番目の月(December)へとつづいています。つまり、序数がつかわれているのです。
イスラーム暦の月名についてはすでに紹介しました(第13回参照)。たほう、インドの暦における月名は複雑怪奇です。サンスクリット語の太陽月はメーシャ、ヴィリシャン、ミトゥナ、カルカ、シンハ、カニヤー、トゥラ、ヴリシュチカ、ダヌス、マカラ、クンバ、ミーナです。1年のはじまりは太陽が白羊宮にはいった時点(メーシャ・サンクラーンディ。現在では4月12日、13日頃)からです。つまり黄道十二宮に対応し、おひつじ座、うお座、みずがめ座、やぎ座、いて座、さそり座、てんびん座、おとめ座、しし座、かに座、ふたご座、おうし座とつづきます。その一方、太陰太陽暦の月は、満月(プールニマ)から満月までをひと月とする暦法(プールニマーンタ法)と新月(アマーワーシャ)から新月までをひと月とする暦法(アマーンタ法)があります。したがって、月名は同じですが、半月単位のずれが生じます。実際は白分(月が満ちる半月)のときは同名で呼ばれますが、黒分(月が欠ける半月)の時は1ヵ月ずれてしまいます。


モンゴルでは現在、年月日は基数をつかっていますが、伝統の暦法では春夏秋冬の季節をもちいていました。それと十二支を組み合わせた月名は次のとおりです。
春初=寅月=1月、春中=兎月=2月、春末=辰月=3月、夏初=巳月=4月、夏中=午月=5月、夏末=未月=6月、秋初=申月=7月、秋中=酉月=8月、秋末=戌月=9月、冬初=猪月=10月、冬中=子月=11月、冬末=丑月=12月という具合です。
最後にタイの太陽暦の月名(十二宮)を紹介しておきましょう。1月=モッカラーコム、2月=グムパーバン、3月=ミーナーコム、4月=メーサーヨン、5月=プルッサパーコム、6月=ミトゥナーヨン、7月=ガラッカダーコム、8月=シンハーコム、9月=ガンヤーヨン、10月=トゥラーコム、11月=プルッサヂガーヨン、12月=タンワーコムです。語尾にアーヨン(到着する)をつけているのが30日の月、31日の場合はアーコム(到来する)が語尾となっています。「ニシムクサムライ」が2月をのぞきヨンでおわっているのです。ちなみに十二宮の語源はパーリ語です。
