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第26回『移動祝日のカーニバル-斎戒の前の飽食』
こよみの博士ひろちか先生
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カーニバルはキリスト教の祝日です。移動祝日の復活祭(第5回「こよみの学校」参照)の前に置かれた四旬節に先立つ祭りなので、日にちは毎年変わります。ふつう2月におこなわれますが、今年のように3月の場合もあります。

四旬節とは40日間の斎戒の期間のことをさします。
復活祭の前に、キリストの受難をおもいだし、自己の罪を懺悔するためにもうけられました。
40という数は、キリストがバプテスマのヨハネから洗礼をうけたのち、40日間荒野をさまよったという福音書の記述にもとづいています。
実際の四旬節は、カーニバル直後の「灰の水曜日」からはじまり、かつ日曜日を数えないので、40日間ではなく46日間となっています。この間、肉食をひかえ、祈りにつとめ、慈善にはげむことが奨励されています。カーニバルは四旬節の肉断ちを乗り切るための飽食の宴でもありました。謝肉祭と訳されるのはそのためです。

ところで移動祝日のカーニバルは春節とおなじ時期にめぐってくることがあります。
2005年には春節と「灰の水曜日」が重なりました。灰の水曜日」には聖なる灰で額に十字をしるす儀式があります。これはカトリック教徒に死を想起させ、懺悔を喚起するものです。
したがって、春節の祝賀ムードとは正反対の気分です。中国系の住民が7割を越えるシンガポールでは、カトリック教会は灰の儀式を金曜日に延期して、水曜日の春節を祝いました。
今年は3月5日が灰の水曜日にあたり、1月31日の春節とは1ヵ月以上もはなれています。暦の「いたずら」と言うほかありません。

カーニバルといえばリオが有名です。リオにかぎらずブラジルでは、カーニバルのパレードでサンバチームが覇を競い合います。サンバチームは正式にはエスコーラ・デ・サンバ、つまり「サンバの学校」といいます。学校とはいっても義務教育ではありません。市民が任意でパレードに出場するための団体をつくっているのです。
カーニバルの直前、サンパウロのサンバチームの一つ、「黄金のバラ」の本部を訪ねたことがあります。そこでは山車の造作や衣装の製作に専念している姿を目の当たりにしました。夜には踊りの練習に明け暮れるそうです。幹部から、夜来てもらっても対応できないと昼への変更を申し渡されました。実は「黄金のバラ」の団旗や衣装、楽器の数々が国立民族学博物館(民博)のアメリカ展示場にならんでいます。1994年に優勝した時の記念すべき資料が展示されているのです。民博訪問の機会があったら、ぜひご覧ください。

民博の展示場では「黄金のバラ」のパレード映像とともに浜松のサンバフェスティバルの様子も流しています。
浜松のほうは10月に開催され、市制100周年を機に浜松カップ「フェスタ・サンバ」と改称され、規模も拡大しているそうです。8月下旬の浅草サンバカーニバルをはじめ、本来のカーニバルの時期とあわないのが日本のサンバの祭典です。ブラジルのカーニバルは夏の時期ですが、そのころ日本は厳寒です。サンバの祭典に日本の2月はきつすぎます。

ちなみに「こよみの学校」はポルトガル語では「エスコーラ・デ・カレンダーリオ」といいます。こちらにはコンテストはありません。時期のコンテキスト(脈絡)があるだけです。

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日本カレンダー暦文化振興協会 理事長

中牧 弘允

国立民族学博物館名誉教授・総合研究大学院大学名誉教授。
吹田市立博物館館長。専攻は宗教人類学・経営人類学。

中牧弘允 Webサイト
吹田市立博物館Webサイト