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国立民族学博物館名誉教授・総合研究大学院大学名誉
教授。吹田市立博物館館長。専攻は宗教人類学・経営
人類学。

3月の第2日曜日、ハワイを除くアメリカのほとんどの州でサマータイム(夏時間)がはじまります。それは約8ヵ月つづき、11月の第1日曜日におわります。アメリカの普通のカレンダーにはサマータイムの開始日(DST begins)と終了日(DST ends)が記されています。

アメリカではサマータイムを正式にはデイライト・セイビング・タイム(Daylight Saving Time、DST)と言います。春になると、日照時間を有効利用するために標準時間に1時間をくわえるのです。それをわかりやすく表現したのがスプリング・フォワード(Spring forward)という言い回しです。スプリングには「春」という名詞の意味と「跳ぶ」という動詞の意味があり、スプリング・フォワードは「春は前に飛ぶ」という洒落につながります。つまり、春には時計を1時間、前に飛ばさなくてはなりません。1時間損をするのです。そのかわり、秋になるとフォール・バック(Fall back)があって、その分を取り戻すのです。名詞のフォールは「秋」、動詞のそれは「倒れる」であり、フォール・バックは「秋には後ろに倒れる」という意味になります。

アメリカではベンジャミン・フランクリンが最初にサマータイムを提唱したとされています。避雷針を発明し、独立宣言の署名者の一人でもあるフランクリンは印刷業を営み、「貧しいリチャードの暦」を発行したことで知られています。倹約と節制と勤勉をすすめ、「時は金なり」(Time is money)という観念を広めた人物でもあります。かれの出版した暦には古今東西の格言やことわざがちりばめられていますが、そのなかにEarly to bed, and early to rise, makes a man healthy, wealthy and wise.(早寝早起きは人を健やかで、豊かで、賢くする)というイギリスの古いことわざがあります。そのフランクリンがパリに特使で行った時、フランス人は早起きをしてローソクを節約しているのを発見しました。そこでかれは匿名の手紙をしたため、シャッターには課税を、ローソクは配給に、日の出には教会の鐘を突き、大砲を鳴らすようアメリカに書き送ったそうです。

実際のサマータイムは第一次世界大戦時の1916年に石炭の消費量を減らすために導入されました。ドイツが先で、イギリスやフランスがつづきました。アメリカは戦後の1918年に開始しています。第二次世界大戦中はWar Time(戦争時間)と称し、アメリカは年中“サマータイム”でした。それが戦後、Peace Time(平和時間)に変わりました。日本でもアメリカの占領下で1948年から1952年にかけて夏時刻法にもとづくサマータイムが実施されていました。その後、ときどき再導入が検討されましたが、実現にまでは至っていません。