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国立民族学博物館名誉教授・総合研究大学院大学名誉
教授。吹田市立博物館館長。専攻は宗教人類学・経営
人類学。

今年のイースター(復活祭)は331日(日)でした。ところが、日本カレンダー暦文化振興協会のオリジナル・カレンダーにはもうひとつのイースターがのっています。それはなんと55日(日)です。こどもの日がキリストの復活祭にもなっているのです。前者はカトリックやプロテスタントの祝日で、後者は東方正教会の祭日です。今年は1ヵ月以上もはなれているのです。

宗派のちがいとはいえ、どうしてこんなことが起こるのでしょうか。それは暦法のちがいに由来します。つまり、ユリウス暦とグレゴリオ暦の相違なのです。ユリウス暦はユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)がエジプトの太陽暦にならってB.C.45年に制定した太陽暦です【第3回「クレオパトラの鼻がもう少し低かったら」参照】。そこでは1太陽年は365.25日と定められ、4年に一度閏日を1日置いて調節することにしました。

ところが、実際の太陽年は約365.2422であり、時間にして1114秒ほど短いのです。その誤差は128年経つと1日となり、16世紀には10日にも達してしまいました。もちろん修道士のロジャー・ベーコンなど一部のひとはそのことに気づいていたのですが、ローマ教皇庁も東方正教会も暦法を変更しようとはしませんでした。イースターなどキリスト教の重要な祭日が季節に合わなくなっているというのに。教皇庁が重い腰をあげたのはようやく1578年になってからです。ときの教皇グレゴリオ13世が改暦委員会を招集し、1582年にグレゴリオ暦が制定されました。太陽年は365.2425日と決まりました。調整のため、10日間、暦を先に飛ばしました。グレゴリオ暦には空白の10日があるのです。それが今日、われわれが使っている暦です。

ところで、イースターは「春分の日を過ぎた最初の満月の日の次に来る日曜日」と定められています。そして春分の日は321日に固定されました。今年の場合、グレゴリオ暦では最初の満月は327日となります。したがって、イースターはその次の日曜日、すなわち331日でした。

他方、今年のユリウス暦の321日はグレゴリオ暦の43日にあたります。43日以降の満月は426日です。ならば、次の日曜日である428日にイースターがきてもよさそうなのに、なぜ55日になるのでしょうか。理由は、ユリウス暦の満月の計算が21世紀では9日ほどグレゴリオ暦の天文学的な満月より早く来るからです。今年の場合はグレゴリオ暦の430日(火)です。したがって、次の日曜日である55日がイースターになるわけです。

「ちりも積もれば山となる」のたとえがこよみの誤差に影響をあたえている一つの例です。