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夏至の食べ物-和食レストラン「こよみ」

今回は夏至の食べ物について学んでみましょう! こよみの博士ひろちか先生
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四方を海に囲まれ、急峻な山並みが走る日本列島。太古の昔から、海幸彦と山幸彦の神話が語りつがれ、今では海の日と山の日が祝われています。海の日は1996年から国民の祝日に仲間入りし、山の日も来年(2016年)から加わります。島国であると同時に山国でもある日本。その景観をしかと認識する記念日になることでしょう。

海の日はそもそも「海の記念日」にルーツをもっています。それは1941年に制定されたもので、明治天皇が1876年、東北・北海道への御巡幸から横浜に船で帰着された7月20日を記念したものでした。1990年代、海洋国家としての意識を高める目的で「海の記念日」を国民の祝日に格上げしようとする運動が盛り上がり、「海の恩恵に感謝し、海洋国日本の繁栄を願う日」として祝われるようになりました。当初は7月20日に固定されていましたが、ハッピーマンデーの制度により2003年から7月の第3月曜日に変更されました。

海の日は世界でも類例のない国の祝日ですが、黙っておれなかったのが山の関係者です。日本山岳会をはじめとする山岳関係者や林野庁、自然保護団体などが声をあげました。すでに「山の日」を制定していた地方自治体もその列に加わりました。こうして超党派の議員連盟がお盆の前の8月12日を候補日として提案する準備を進めましたが、1985年の日航機墜落事故の日を記念日にすることに異をとなえたのは群馬県選出の国会議員たちでした。そして群馬県知事の日付見直しの要請を受け、8月11日に決着したという経緯があります。

わたしは山国信州の出身ですが、長野県では2013年から「信州 山の日」の検討をはじめ、2014年から7月の第4日曜日をその日として祝うようになりました。趣旨には「県民共通の財産であり、貴重な資源である『山』に感謝するとともに、『山』を守り育てながら活かしていく機運の醸成の機会とする」と記されています。

長野県には「信濃の国」という県歌があり、小学校で習うため、誰でも知っています。その一番は「信濃の国は 十州に 境連ぬる 国にして 聳ゆる山は いや高く…海こそなけれ 物さわに 万ず足らわぬ 事ぞなき」と歌われます。つまり、高い山々が連なる国(県)であり、海はないが万事足りている、というわけです。ちょっとやせ我慢のところもありますが、山国であることをことさらに強調しています。

長野県だけでなく都道府県で山の日を祝っているところは全部で13県あります。日付もまちまちで、静岡県の「富士山の日」は2月23日ですし、和歌山県では11月7日が「紀州・山の日」です。富士山のほうは223をふじさんと読ませていることはすぐにわかりますが、和歌山のほうがなぜ11月7日かについては地元の民俗と関係があり、旧暦の11月7日に山の神に感謝していたことに由来するようです。

山の日は川の日とペアで、あるいは森や森林(もり)の日として祝う県もあります。関東平野の千葉県は「里山の日」としていますし、滋賀県は「びわ湖水源のもりの日」となっていて、県ごとにユニークな命名がなされています。

海と山、この両者が相まって日本の国土を特徴づけています。海の幸と山の幸を神前に供える風習は神道祭式の基本ですが、祝儀袋に熨斗鮑(のしあわび)を添えるのは山の幸に偏りがちな贈答品に海の幸を添える意味があるといいます。熨斗には命を伸(の)すという不老長寿の願意もあり、多義的なシンボルではありますが、海と山のバランスをとることにはいかにも日本的な配慮を感じます。

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日本カレンダー暦文化振興協会 理事長

中牧 弘允

国立民族学博物館名誉教授・総合研究大学院大学名誉教授。
吹田市立博物館館長。専攻は宗教人類学・経営人類学。

中牧弘允 Webサイト
吹田市立博物館Webサイト