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今回は山の日のルーツについて学んでみましょう! こよみの博士ひろちか先生
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日本カレンダー暦文化振興協会(暦文協)では毎年、オリジナル・カレンダーを発行しています。会員向けに配布するのが基本ですが、一般にも門戸を開いています。相当にマニアックな内容ですが、うれしいことに愛好者が少しずつ増えています。

今年(2017年)は「在日外国人のカレンダー」を特集していますが、「使い終わった後も保管しておきたいカレンダーです」といった声が在日外国人の奥様をもつ方から寄せられました。また、「旧暦に明治/大正/昭和/イスラーム暦まであって編集者にとってはとても助かるものです という反応もありました。さらに、「月の満ち欠けの記載、とても便利です。若い女性のあいだでは、新月にお願い事をしたり、満月に叶ったことに感謝したり、ダイエットを始めたりするのが流行っているのですが、ついつい新月・満月の日を忘れがちなので助かります。あと七十二候の読み仮名があるのもありがたい」と書き送ってきた方もいます。

このカレンダーは暦文協創立の翌年からはじまりました。2012年版のテーマは大小暦でした。人類学の碩学、長谷部言人博士のコレクション(神奈川県立歴史博物館に寄託)からできるだけ季節にあった絵柄をえらびだし、岡田芳朗著『江戸の絵暦』(大修館書店、2006年)に準じた解説がつけられました。「大の月」と「小の月」をあらわす漢数字が図柄に隠されているため、謎解きのような面白さがあり、洒落た言葉遊びもおおいに楽しむことができます。

2013年版はベンジャミン・フランクリンの「貧しいリチャードの暦」がとりあげられました(本コラム第4回参照)。それは1733年にフィラデルフィアで発行され、毎年1万部近く売れ、約25年間つづきました。フランクリンは暦(冊子のアルマナック)の余白に古今東西の格言や金言、あるいはみずから編み出した文言などを埋め、市民道徳の向上をはかりました。のちに「時は金(かね)なり」(Time is money.)とか「早寝早起きは三文の得」にあたる「Early to bed, and early to rise, makes a man healthy, wealthy and wise. といった格言だけを集めた本がいろいろ出版されましたが、そうした本の挿画が12点、紹介されています。

2014年版には引札暦が採択されました。引札とは商店が広告を印刷したチラシのようなもので、それに略暦をつけたのが引札暦です。明治16(1883)年以降、暦の製造販売が自由になり、印刷技術も木版から活版やオフセットに変わり、多様な図柄の多色刷りカレンダーが盛んにつくられるようになりました。引札暦は商店名の入った1枚もので、柱や壁に貼ってもらえるメリットがありました。

2015年版は「東アジアの暦」を特集し、北朝鮮のカレンダーや木蘭従軍の月?牌(げっぷんぱい。本コラム第39回参照)を紹介しました。チベット仏教、道教、イスラームの寺院や廟が発行するものも取り扱っています。2016年版ではふたたび長谷部コレクションの大小暦のなかから表紙と月表をあわせ13点が選ばれました。そして今年の「在日外国人のカレンダー」では在日中国人、在日コリアン、在日ブラジル人、在日フィリピン人をはじめ、東京モスクや函館ハリストス正教会のものがそれぞれの時代的背景をふまえて解説されています。

暦文協カレンダーをユニークにしているのは特集だけではありません。掲載事項が豊富なことがもうひとつの特徴です。旧暦、六曜、二十四節気、七十二候のほかに八十八夜や二百十日などの雑節、月の満ち欠け、潮の干満などです。国民の祝日はもとより盆、彼岸、節句、バレンタイン、ハロウィン、クリスマスなど国内の主要行事以外にも、カーニバルやイースター、ラマダーンなど世界の代表的行事も記載されています。さらに、ユダヤ暦、エチオピア暦、ヒジュラ暦、イラン暦などの新年もとりあげています。日月食などの天文情報も図解付きで提示され、新年から数えて第何週かという、めずらしい項目すらあります。

暦の愛好者には便利であるとともに、「地球時代」(梅棹忠夫)を生きていることを意識させる希有(けう)なカレンダーなのです。

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日本カレンダー暦文化振興協会 理事長

中牧 弘允

国立民族学博物館名誉教授・総合研究大学院大学名誉教授。
吹田市立博物館館長。専攻は宗教人類学・経営人類学。
著書に本コラムの2年分をまとめた『ひろちか先生に学ぶこよみの学校』(つくばね舎,2015)ほか多数。

中牧弘允 Webサイト
吹田市立博物館Webサイト