第3回「季語っていろいろ」

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「俳句、はじめました」とは?
このページでは、できるだけ今の言葉でわかりやすく、俳句の面白さや楽しみ方をご紹介していきます。日本ならではの俳句の世界に、ちょっとだけ触れてみませんか?

前回に続いて季語のお話です。8000個あるといわれる季語には、とにかくいろいろな言葉があります。今回は、なかでもとりわけ変わったものをご紹介していきます。

季語をまとめた歳時記には、季節感のあまりない言葉もあります。たとえば春の季語として「ぶらんこ」「しゃぼん玉」「風船」など。(※歳時記によって掲載のないものもあります)

こうした季語は、子供が寒さから解放されて公園で遊ぶ「ぶらんこ」、春の淡い水色の空に浮かぶ「しゃぼん玉」やカラフルな「風船」、というように春が“似合う”ということもあって春の季語なのだそうです。

ちなみに、夏は汗をかいて使う頻度が増えることから、「ハンカチ」「髪洗う」「香水」などが夏の季語になっています。

また、秋は夜が長いため、農家の人たちが夜も仕事をしたことから「夜なべ(夜業)」は秋の季語なのですが、夜なべをしているとお腹がすくので「夜食」も秋の季語になっていたりと、合わせて季節を表しているものもあります。

寒さを遮ってくれる「布団」「毛布」「障子」などは、イメージどおり冬の季語とされています。

こうしてみてみると、娯楽も物も少なかった時代に、昔の人々がどれだけ季節を繊細に感じながら過ごしていたのかがわかりますね。

季語には、現実にはありえないファンタジーなものもあります。たとえば、春の季語「亀鳴く」。

亀は実際には鳴かない生き物ですが、「春ののどかな日やしっとりとした夜、亀の声が聞こえてきそうな気がする」と読み手の空想を促すような春の季語となっています。

また、秋の季語に「蚯蚓(みみず)鳴く」というものもあります。

「秋の夜の静けさが、蚯蚓の声が聞こえてきそうなくらいなのかな」と想像を広げてくれるような句も詠まれていて、日本人の豊かな感性に驚かされます。

さらに、中国の古代の伝説から、竜が天に登って雨を降らせるという「竜天に登る」や、「雪女」「狐火」なども季語になっています。

どうやって自分の身近な季節につなげて俳句にするのか、腕の見せ所ですね。

冬の季語に「童貞聖マリア無原罪の御孕りの祝日(どうていせいまりあむげんざいのおんやどりのいわいび)」という季語があります。

これが季語の中で最も長いものと言われていて、なんと計25音。季語だけですでに5・7・5の17音を超えているのです…。

この言葉が表すのは「12月8日」。キリスト教の聖マリアの母、アンナがマリアを身ごもったとされる日だそう。

一方で、最も短い季語は1音。こちらは色々と種類があります。

たとえば、夏の季語のひとつ、「鵜(う)」。

その他にも、「蚊(か)」「蛾(が)」「夏(げ)」「茅(ち)」「氷(ひ)」「芽(め)」「炉(ろ)」「絽(ろ)」などなど、いろいろあります。

長い季語も短い季語も、一見季節感のあいまいな季語も、それぞれ理由があって、特定の季節を表す言葉として選ばれています。

歳時記をめくりながら、「なぜこの季語はこの季節なんだろう…?」と思いを巡らせて調べてみるのも楽しいものです。

【参考文献】

夏井いつき(2019)『夏井いつきの 俳句ことはじめ 俳句をはじめる前に聞きたい40のこと』 株式会社ナツメ社.

宇多喜代子(2020)『NHK俳句 暦と暮らす 語り継ぎたい季語と知恵』 NHK出版.

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暦生活編集部

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