こんにちは、こんばんは。
くりたまきです。
「山粧(よそお)う」という言葉は、山々が秋の訪れとともに紅葉で色づく様子を表しています。ちなみに四季の山には情景を表現する言葉がそれぞれあり、春は「山笑う」、夏は「山滴る」、冬は「山眠る」と言うんですって。どれも俳句の季語として使われています。
秋には山が粧う、つまりお化粧をしたようだ、と例えるこの言葉。言い得て妙だなあと、山々に囲まれた長崎県波佐見町で暮らし始めたわたしはうっとりしてしまいます。お化粧って、急激な変化ですよね。素顔に色をのせて、短時間で美しく変身する。そう思えるくらい、あっという間に山々が変化したように昔の人は感じたのでしょう。
今年も暑い日々が続いていたのに、急に冷え込みましたね。この冷え込みと同じように紅葉の予告なくやってくる感じが「粧う」につながっているのではないでしょうか。個人的な感覚ですが、春に花が咲くまではじっくり蕾を眺めて待ちますが、紅葉は意識することなく気づいたら……ということが多い気がします。
また、色づき方も、お化粧のように多彩です。モミジ、ハナミズキ、ドウダンツツジ、ニシキギなど、さまざまな植物が赤く染まりますが、それぞれの色味がすこしずつ異なり、グラデーションになって山を美しく見せます。まるで自然の色彩とは思えないほどの華やかさです。
さらに、紅葉シーズンの山は、時間帯によっても見え方が変わってきます。昼間の青い空の下で紅葉する山は色のコントラストが素晴らしい。一方、日が沈む前に紅葉した山が夕日に照らされると、緑の木々も含めて山全体が淡く茜色に染まり絶景です。どちらも見どころがあります。時間によっても、山の粧いが違って感じられるのではないでしょうか。
わたしは自然豊かな場所に住み始めて「同じ景色はひとつもない」ということを、あらためて実感しています。日々すこしずつ日差しが変わり、温度が変わり、色彩が変わっていく。時間が、季節が、舞い散る紅葉とともに過ぎていくことのよろこびを受け止めながら、暮らしていきたいものです。
もう紅葉の季節がやってきていますね。美しい山々のように、赤を差し色にした服装やお化粧をして、ちょっと華やかに過ごしてみようと思います。みなさんはこの秋、どんな風に粧いますか?
栗田真希
ライター
横浜出身。現在は東京、丸ノ内線の終着駅である方南町でのほほんと暮らす。桜をはじめとした花々や山菜が芽吹く春が好き。カメラを持ってお出かけするのが趣味。OL、コピーライターを経て現在はおもにライターとして活動中。2015年準朝日広告賞受賞、フォトマスター検定準一級の資格を持つ。
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