明け方に空をみると、ぼんやり浮かぶ「有明の月」に出会うことがあります。
夜に見る月とはまた違って、いまにも消えてしまいそうな薄明かり。それはまるで繊細な心を映し出しているようで、百人一首でもこんな歌が詠まれています。
「すぐに逢いに行く」とあなたが言ったので、私は9月の夜長を待っていました。
そしてとうとう明け方となり、有明の月が出てきてしまいました。
有明の月は、有明月(ありあけづき)とも呼ばれ、名前の由来は、「夜が ”明”けても、まだ空に”有”る月」の意味からきていると言われています。満月(月齢15前後)より後、月齢15前後〜29までの月のことを指します。

そもそも月は、新月からはじまり、三日月、満月へと形を変え、また新月に戻るという「満ち欠け」を約29.5日の周期で繰り返しています。この満ち欠けを表したものを「月齢」と言い、新月は月齢0として表します。
月齢15前後の満月のときには、夜を迎える時間に月がのぼり、朝を迎える時間に沈んでいくので、「月齢16以降の有明の月が、夜明けの空に残っていく」ということになります。
冒頭に紹介した百人一首が詠まれた平安時代は、いまのように電気がなく夜は真っ暗だったと想像します。電話やメールなどもなく簡単に連絡が取れないので、真夜中にのぼる月明かりを眺めながら、長い夜をただひたすらにじっと待ち続ける。そしてとうとう朝になり、待ち人は来ず、小さな希望が月の明るさに比例するように薄れていく。
その気持ちを思うと、心の奥をギュッと掴まれるような切ない気持ちが込み上げてきます。同時に、そのなかでも唯一ともに時間を過ごしたのが「有明の月」だったのかなぁと思うと感慨深さが増してくるようです。

帰り道、ふと空を見上げたら妙に月が目に入ってくることがあります。夜中でも昼間でも見つけた自分がうれしくて、さらにその月がうつくしいと大切な誰かに伝えたくなります。「きれいだね」と言いながら空を見上げるとき、その一瞬だけ、月がすべてを受け止めてくれているような気がするのです。
今月もそろそろ有明の月が見える頃でしょうか。
ぜひ早起きをして明け方の空を見上げてみてください。ぼんやりと、でもたくましく。
私たちの真夜中を受け止めて、明るい方向へ照らしてくれることでしょう。


松下恭子
うつわ屋 店主・ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。
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