こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。
秋というのは、しみじみと「懐かしい人を思い出す」ことの多い季節であるような気がします。
しばらく会っていない懐かしい人、今は亡き大切な人――。その人と過ごした思い出が、日常の何気ない瞬間に、ふっと心をよぎるのです。
今回ご紹介する国民の祝日「秋分の日」は、「先祖をうやまい、なくなった人々をしのぶ日」という意味が込められているのをご存知でしょうか?
日付は毎年、国立天文台による天文観測によって9月23日頃の「秋分日」に定められていて、2020年は9月22日が「秋分の日」にあたります。日の長かった夏を越えて、昼夜の長さがほぼ等しくなりつつある時期……。つまり、この日を境に、少しずつ夜が長くなっていくのです。
この日は、春と秋で年に二度ある「お彼岸」の中日。秋分の日を真ん中にして、前後3日の計7日間が「彼岸」の期間になっています。
「彼岸」とは、元々仏教から来た言葉で、三途の川を挟んで私たちの暮らすこちら側が「此岸(しがん)」、向こう岸が「彼岸(ひがん)」――。だからこそ、「この世とあの世が最も近づくとき」とも言われているんです。
ご先祖様の鎮まるお墓や祖霊舎(それいしゃ=ご先祖様をお祀りする神棚のことで、仏教における「仏壇」と同じ意味のもの)を磨き、お参りをして日々の御恩に感謝をお伝えするのが、日本人にとって大切な文化として受け継がれてきました。
「この世とあの世が近づく」ということには、不思議と怖さよりも、今は亡き大切な人たちとの繋がりや結びつきがより深くなり、そばで見守ってくださる存在を近く感じられ、どこか心があたたかくなるような気がしてきます。
神道ではご先祖様も「神様」ですし、仏教では「仏様」になる存在です。
きっと、今もなお向こうの世界からこちらを見ていて、私たちががんばって生きる姿を応援してくださっていることでしょう。
この日は宮中においても、歴代天皇の御霊(みたま)をお祀りする「秋季皇霊祭(しゅうきこうれいさい)」が行われています。天皇陛下が国家と国民の安寧と繁栄を祈ることを目的とした、宮中祭祀の中のひとつでもあります。
私たち一人ひとりが、たくさんのご先祖様たちの命が繋いできた果てしなく長い道の上に立ち、「今」を歩いています。
どんなに忙しい日々を送っていたとしても、このような日にはふと立ち止まり、目には見えないご先祖様に想いを馳せたり、懐かしい顔を思い出したりしてみませんか?
その想いは、きっと、繋がりあった心を通じて届いてゆくはずです。
紺野うみ
巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。
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