12月3日は「カレンダーの日」です。
全国団扇扇子カレンダー協議会(全協)と全国カレンダー出版協同組合連合会(全カ連)が1988年に定めた「冠(かんむり)デー」の1つです。日本カレンダー暦文化振興協会(暦文協)はこの日に明治神宮で新暦奉告参拝をおこないます。とはいえ、業界以外の人にとってはほとんど馴染みがなく、世間的にはあまり知られていません。


しかし、この日は日本史にとってはおろそかにできない日です。歴史学研究会編『日本史年表』(岩波書店)の和暦、明治5年12月3日の欄には「この日を明治6年1月1日とする」とあります。
日本史の関係者にとって和暦と西暦の正しい理解は必要不可欠です。ですから歴史家たるもの、日本史にはいわば「失われた1ヵ月」があることをわきまえています。1872(明治5)年12月4日から12月31日は日本史上に存在しない日々なのです。あえて言うならば、この年のクリスマスは日本では祝われていません。

とはいえ、その頃、キリスト教はまだ禁止されていました。よってクリスマスは祝われるはずもありませんでした。ようやく翌年の2月24日に切支丹(キリシタン)禁制の高札(こうさつ)が撤廃され、キリスト教の布教が許されるようになりました。
西暦への改暦とキリスト教の公認とのあいだに何らかの関係があるのかどうか、確かなことはわかりません。しかし、西暦は1582年、ローマ教皇グレゴリオ13世のときに改暦したものであり、グレゴリオ暦と称され、キリスト教の暦と言っても過言ではありません。
その暦を日本が採用したからには、キリスト教をいつまでも禁止するわけにはいかなかったでしょう。

ところで、漢字の暦は「れき」と発音し、和訓では「こよみ」と読みます。暦とは日(太陽)が規則正しく運行することを字義としています。ちなみに暦に似た「歴」のほうは一定間隔の止(足跡)、つまり歩行を意味しています。一足一足、一歩一歩の歩みが積み重なって歴史となるわけです。
他方、和訓の「こよみ」のほうは「日読み(かよみ)」、つまり日を読むこと、あるいは日を数えることを意味しています。

似たような表現に日和見(ひよりみ)があります。こちらは日和(空模様)を見て判断することです。実際、日本の海岸沿いには日和山(ひよりやま)という小高い山が点在し、そこで天候や潮の流れを見きわめていました。
その一方、月齢を数えることは月読みと言います。
三日月、十三夜、十五夜、二十三夜、そしてつごもりとなります。つごもり(晦)とは月隠りの短縮形であり、ついたち(朔)とは月立ちを意味しています。月もまた月齢を基準とする暦(太陰暦、太陰太陽暦)には不可欠の存在です。

さて、カレンダーのほうはラテン語のカレンダエを語源としています。
古代ローマの暦にはひと月のなかに3つの基準となる日がありました。そのひとつが朔日のカレンダエです。1月1日は「ヤーヌスの月のカレンダエ」となります。カレンダエはもともと「宣言」や「布告」を意味し、新月が見えたときに新しい月に入ったことを宣言したことに由来しています。
日本では暦とカレンダーは同じ意味で使われることも多いのですが、区別して用いることもあります。
なぜなら暦は中国伝来の呼称であるのに対し、カレンダーは西洋起源の呼び方だからです。しかし、いずれも「こよみ」であることに変わりはありません。

広義の「こよみ」には暦書や暦本、あるいはアルマナック(暦付きの年鑑の類)もあります。ベンジャミン・フランクリンが作成し流布させた「貧しいリチャードの暦」はPoor Richard’s Almanackです。

来年(2022年)は明治改暦の詔書が出されてから100年になります。
そもそも「カレンダーの日」は12月3日ではなく1月1日でもいいはずですが、さすがに元日をカレンダーの「冠デー」にするわけにもいかず、12月3日に決まったという次第です。「ヤーヌスの月のカレンダエ」は「カレンダーの日」としては幻に終わりました。

中牧弘允
文化人類学者・日本カレンダー暦文化振興協会理事長
長野県出身、大阪府在住。北信濃の雪国育ちですが、熱帯アマゾンも経験し、いまは寒からず、暑からずの季節が好きと言えば好きです。宗教人類学、経営人類学、ブラジル研究、カレンダー研究などに従事し、現在は吹田市立博物館の特別館長をしています。著書『カレンダーから世界を見る』(白水社)、『世界をよみとく「暦」の不思議』(イースト・プレス)など多数。
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