雪見ゆきみ

暦とならわし 2021.12.19

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12月も後半に入りました。
日ごとに寒さが厳しくなり、ふとんやこたつから出られなくなる季節。本格的な冬がやってきましたね。年末へ向けて、仕事納めや大掃除、お正月の準備などでせわしなく動いている方も多いのではないでしょうか。

そんな時期にふと立ち止まり、楽しんでいただきたいのが「雪見」です。

雪見は、四季折々の自然を慈しむ日本人の心から生まれた風習の一つで、「雪景色を眺めて楽しむこと」を言います。

中国の漢詩人 白居易の詩にはこんな歌があります。

雪月花時最憶君(雪月花の時 最も君を憶ふ)

「雪月花(せつげつか/せつげっか)」とは、冬の雪、秋の月、春の桜のことを言い、自然の中で最も美しいと感じたものを総称する言葉です。一番美しいと感じる瞬間に、大切な誰かを思う。自然の情景に重ねた繊細な心の響きが伝わってくるようで、胸が熱くなります。これほどまでに昔から「雪を見ること」は人々にとって尊い時間だったのかもしれません。

また、当時の様子は、葛飾北斎の代表作、「富嶽三十六景 礫川 雪ノ旦(こいしかわゆきのあした)」にも描かれています。澄んだ空気の中、真っ白な雪に覆われた富士山を眺めながら男女ともに「雪見」を楽しむ。賑わう声が聞こえてきそうな、生き生きとした様子が描かれています。ちなみにこの作品は、富嶽三十六景の中で、唯一の雪景色なのだそう。

私は、雪が降る様子をあらわす「しんしん」という言葉が好きです。
冷えきった空気の中、ひっそりと降る雪の風情。まさに「静寂」という言葉がぴったりで、心の落ち着きを取り戻すようです。

朝起きてカーテンをあけると目の前に広がる、真っ白な世界。

幼い頃、いつもの景色が激変しているのにびっくりして、興奮そのままに雪へダイブしていたことを思い出します。大人になってからは、あたたかい場所から眺めることが多くなりましたが、それでも雪景色を見たときのワクワクする気持ちは今も昔も色褪せていません。

私が住む奈良県で、昨年、こんな景色に出会いました。

浮見堂  写真提供:松下恭子

いつもは湖がある場所なのですが、なんとこの日は真っ白に。
寒さで凍りついた身体が、一瞬でほどけました。

写真提供:松下恭子

この日は周りにたくさんの写真家が集合していて、シャッターを切る音と、雪がしんしんと降る音が交互に重なり、静けさと混じり合って幻想的な空間でした。

さて、今季はどんな雪見ができるでしょうか。
今から楽しみに、冬を過ごそうと思います。

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松下恭子

ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。

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