飛梅伝説とびうめでんせつ

暦とならわし 2022.02.25

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まだまだ寒い日が続きますが、少しずつ春の足音を感じる瞬間が増えてきました。
ふと吹く風からあたたかさを感じたり、メジロやヒバリが鳴く声が聴こえたり..。
植物たちも長い冬から目覚め、だんだんと華やぎはじめました。

そんな季節にピンクや赤など明るい色で、ひと足早く春を届けてくれる花が「梅の花」です。

梅の花を見つけると、いつも一瞬「桜かな?」と勘違いしてしまうのですが、よーく観察してみるとすぐに違いが分かります。幹はごつごつして勇ましく、花びらの形は丸くて、顔を近づけるとふわりと甘い香りも届けてくれます。

さて、梅の花と言えば、古くから伝わる『飛梅(とびうめ)伝説』というお話があるのをご存知でしょうか?

福岡県の太宰府天満宮にあるご神木「白梅」にまつわるお話で、主役は太宰府天満宮にまつられている学問の神様、菅原道真。今日はそのお話をご紹介します。

901年、菅原道真は藤原時平との権力争いに敗れ、遠く太宰府へ左遷されることになりました。突然京都を離れることになった道真は、日頃から愛でていた梅の木に別れを告げるこんな歌を詠みました。

東風吹かば 匂ひおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ

「東風(こち。春風のこと)が吹いたら、香りをその風に託して大宰府まで送り届けておくれ、梅の花よ。主である私がいないからと言って、春を忘れてはならないよ」

離れてしまう寂しさと、太宰府に行っても忘れずにいたいという願いが込められた歌です。そんな道真の真っ直ぐな想いを受け取ったのか、梅の木は、一晩にして太宰府へ飛んでいったと言います。この梅が、現在の太宰府天満宮にある、樹齢1,000年を超えたご神木、白梅に名付けられた「飛梅」になります。「飛梅」は毎年、2月上旬から中旬にかけて見頃を迎えますが、境内にあるどの梅よりも先に咲いて、参拝者を楽しませてくれるそうです。

また当時、道真は梅の木と同じように、桜や松の木も愛でていたそうです。桜の木は道真がいなくなってしまった悲しみに耐えきれずその場で枯れてしまいました。松の木は梅とともに道真を追って太宰府へ飛んで行きましたが、途中で力尽きてしまい、兵庫県に根をおろし、「飛松伝説」として今も語り継がれていると言います。

こんな話を知ってしまうと、ますます道真に対する梅の木の健気さと、今も太宰府で咲き続けているという奇跡のような事実に、心打たれてしまいますね。

私はこの話を聞いて、もしかしたら「飛梅」だけではなく、普段私たちが目にするものひとつひとつにも物語があるのかもしれないなぁと思いました。今目の前にある植物は、誰かのことを想って、一生懸命に咲いたり、枯れたりしているのかもしれません。そう考えると、偶然に出会えた奇跡、その一瞬一瞬が尊いものだなと、この「飛梅伝説」から学ばせてもらったような気がします。

今年も梅の花がきれいに咲き始めていますね。
この記事を読んでくださったみなさんにも、素敵な伝説が訪れますように。

※この記事の配信日2月25日は、菅原道真の忌日です。

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松下恭子

うつわ屋 店主・ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。

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