こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。
毎年6月10日は、時の記念日。どこかロマンチックな雰囲気を感じさせる名前ですが、この記念日の由来は、意外と歴史を感じさせる内容だということをご存知でしょうか。
日本に残る最古の歴史書『日本書紀』には、西暦671年に天智天皇が、唐から伝えられた「漏刻(ろうこく)」という水時計を建造したこと。そして、その時計ではじめて時を知らせる儀式(時の奏)を行い、日本で初めて正式な「時」が刻まれ始めた――という故事が記されています。
そのことからも、天智天皇をお祀りする神社である滋賀県の近江神宮では、毎年「漏刻祭(ろうこくさい)」という珍しいお祭りが斎行されています。


水を使って時間の経過を計る「水時計」は、まさに「漏れ出る刻」といったイメージ。
階段のように上から下へと続いてゆく水槽の中に、水が一定の速度で順に流れ込み、その水面に浮かべた矢の差し示す目盛りが、時刻を知らせてくれる仕組みになっています。

私たち日本人の祖先たちは、それまで日時計を用いて大まかな時間を導き出していましたが、日時計は昼間や晴れている時にしか使うことができません。しかし、水を用いた時計であれば、いつでも時間を知ることができます。
「時の記念日」が制定されたのは、そこからさらに時代を越えて、1920年(大正9年)のことでした。
当時は、日本も諸外国に倣って「近代化」が推し進められていた時代です。すでに外国人は懐中時計を使って時間管理をしていたようですし、この記念日には「私たち日本人も、時間に対する感覚を改めていかなければならない」という意思が込められていました。

今ではなかなか想像がつかないかもしれませんが、かつて日本は日の出と日没を目安に、その間を6等分する「不定時法」という方法で、ざっくばらんな時間の把握をしていました。一般庶民には、おおよそ2時間おきに鳴る鐘の音だけが、時間を意識する手段だったのです。
そのため、当時は外国人から見て、「日本人は時間にルーズだ」と思われていたと言われています。
やがて他人とも明確に時間の共有ができるようになり、生活も規則正しく、より便利で合理的に変化していっていったのでしょう。
時の記念日を制定した大きな目的は、国民に「時間の大切さ」や「時間を守ること」を徹底させるためだったわけですが、生真面目だとされる私たちの国民性には、思いのほかスッと馴染んでいったのではないでしょうか。
今では諸外国の中でも、特に「時間に正確な民族」だという定評ができ上がるまでになりましたからね。

時間を計る目盛りが細かく正確になって、現代社会のように「効率的」な生活に転じた日本。しかし、その中で日々を生きながら、私はふと昔の生活にも想いを馳せてしまいました。
昔の人たちにとっては、「時間」というものが正確で一定の物差しではなく、自らの心や世界の中から感じ取って生きていたのではないかな……と。
たとえば、美しい自然の姿を眺めていて、つい時間が経つのを忘れてしまったり。楽しいことをしているときには時間があっという間に思えて、退屈や憂鬱を感じているときには時間がやけにゆっくり感じられたりもしますよね。
これは、私たち一人ひとりの心が感じ、自分だけが抱く「時の姿」なのかもしれません。

時の記念日から「時間の大切さ」を改めて学ぶとしたら、私たちは「人と同じ時間を守ること」はもちろん、「自分が感じる時の流れを愛しむこと」も意識してみたいものです。きっと、時間の過ごし方も、その時々、人それぞれ。流れるのか、積み重ねるのか、駆け抜けるのか、抱きしめるのか。
いろんな感じ方をしながら、大切に「今」を生きたいものですね。

紺野うみ
巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。
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