こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。
皆様は、長野県・諏訪湖の「御神渡り」をご存知でしょうか?
時に荒々しく、時に繊細に。湖を渡ってゆくようにつけられた、白い氷の山脈――その現象につけられた名前が「御神渡り」です。

これは厳しい冬の季節に湖面が全面結氷し、さらに朝晩の寒暖差によって氷の膨張と収縮が繰り返されることで生まれる、高さ30~60㎝くらいの氷の山脈を言います。
直径1.5㎞以上の淡水湖であること。凍ることのできる浅さであること。10~20㎝以上の厚さの氷が張る寒さであること。積雪が少ないこと。一日の最低気温と最高気温の差が大きいこと。
――このように、複数の条件が重なってはじめて現れる、諏訪湖ならではの「奇跡」とも言える現象です。

名前に「神」の文字があることからも分かるように、伝説ではこの御神渡りは、上社にお祀りされている男神「建御名方神(たけみなかたのかみ)」が、下社にお祀りされている女神「八坂刀売神(やさかとめのかみ)」のもとへ出かけた道筋だと言い伝えられています。
湖に生まれた、神様の逢瀬の足跡だなんて、なんともロマンチックですよね。
諏訪大社の上社と下社は、御神渡りが起こりやすい場所の両端近くに、相対してお祀りされているとも言われています。

諏訪湖の結氷調査は、諏訪市にある諏訪大社・上社の摂社である八剱(やつるぎ)神社が担い、諏訪市の無形民俗文化財でもある「御渡り神事」を行うことで「御神渡り」と認定しています。この記録は、実に500年ほど前から残されているのだとか。
自然現象であるため時期は年によって異なりますが、およそ1~2月の間に出現し、数日から数週間、見られることが多いようです。
しかし残念なことに、毎年のように出現していた「御神渡り」も、暖冬や温暖化の影響により平成に入った頃から激減しまっているようです。
前回に現れたのは2018年で、それ以前は2013年。

御神渡りが見られない年のことは「明けの海」と呼ばれているのですが、2018年以降、現在に至るまでその年を更新し続けているのが残念でなりません。
今年の冬も暖かさを感じる日が多いですから、そっと「御神渡り」の吉報を聞くことができる日を願いながら過ごしています。
それにしても、自然の神秘的な姿を見たかつての日本人は、そこに神様の存在を感じたからこそ、このような神事や言い伝えが残されたのではないでしょうか。
「ああ、なんてすごい。これはきっと、神様のなせる業に違いない」
――そんな風に言い出した「誰か」の気持ちが、私にもなんとなくわかる気がするのです。

そして、日本文化の中にあるこういった感性に触れるたび、この国に生まれ育つことができてよかったと、しみじみ感じます。
この世の中には、人の力や技術など到底及ばないような、芸術的とも言える自然現象が数限りなく存在します。
日本人は、そこにひとつひとつ大切に名前をつけながら、喜び感謝し、時に畏れを抱きながら暮らしてきたに違いありません。
次に「御神渡り」を見られるのはいつになるかわかりませんが、どんなにこの世の科学技術が発展したとしても、その「心」は失うことなく持ち続けていたいものですね。

紺野うみ
巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。
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