春分の日も目前に迫り、いよいよ桜開花のニュースが聞こえてくる季節になりましたね。「暑さ寒さも彼岸まで」と言われる通り、心地よく過ごしやすいシーズンがやってきます。今回はそんな春にふさわしい、千葉県の郷土料理を代表する華やかな太巻きずしをご紹介します。

日本でのすしの歴史は古く、古代より魚と米を発酵させた、「なれずし」が食されてきました。現代のように酢飯を使った「早ずし」が生まれたのは江戸時代のこと。魚と酢飯を握った「握りずし」や、木型に酢飯と魚を重ねて押して作る「箱ずし」(押しずしとも呼ばれます)などが誕生しました。「巻きずし」が生まれたのもこの頃と考えられています。

江戸時代後期の『守貞謾稿』には、当時の「玉子巻」について、飯に海苔を混ぜ込み、干瓢を入れて卵焼きで巻いていたことが記されています。その誕生に諸説ある千葉の太巻きずしも、かつてはこのようにシンプルなものから始まったのかもしれません。

千葉県の房総半島を中心に、古くから地域のお祭りや年中行事、婚礼などの際に太巻きずしをつくる風習が伝わってきました。長狭米(ながさまい)の産地として知られる鴨川市もその一つ。このあたりでは、戦前には地域にすしを握る名人の男性がおり、人が集まるたびに腕を奮っていたそうです。戦後は女性たちに役割が移り、今では地域の女性グループの方々が積極的に伝承活動に励んでおられます。

桃の節供、お花見、入学式など、特に春には出番が多く、家族団欒の中心に「太巻きずし」(太巻き祭りずしとも呼ばれます)が並んでいました。一見難しそうに見えますが、材料は酢飯に海苔、卵、干瓢、でんぶなど、実は至って身近なものばかり。花びらや葉っぱになるパーツごとに作り、ぎゅっと巻き上げると、美しい絵柄の太巻きが出来上がります。

今では太巻きのコンクールもあり、毎年新しい図柄が考案されているそう。菜の花、つくし、ひまわりやクリスマスツリーなど、四季折々の風物を表現した可愛らしい太巻きが一年中テーブルを彩ってくれます。「デコ巻き寿司」「飾り巻き寿司」などの名前で全国にも広まっている房総の太巻きずし、まずは簡単な図柄から作ってみてはいかがでしょうか。
取材協力:千葉県鴨川市・花味結
写真提供:清絢

清絢
食文化研究家
大阪府生まれ。新緑のまぶしい春から初夏、めったに降らない雪の日も好きです。季節が変わる匂いにワクワクします。著書は『日本を味わう366日の旬のもの図鑑』(淡交社)、『和食手帖』『ふるさとの食べもの』(ともに共著、思文閣出版)など。
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