こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。
神社に足を踏み入れると、入り口の鳥居や立派な御神木、拝殿の頭上にかけられたしめ縄など――あちらこちらで白い稲妻のような形をした、特徴的な紙片を見かけるのではないでしょうか。
お寺では見かけないものですから、よく「神社」の象徴として挙げられるもののひとつでもあります。(※神仏習合のお寺で境内に神社がある場合は、この限りではありません)
紙垂は、神道・神社に関わるさまざまなものに使われているのですが、皆様はいくつご存知でしょうか。
たとえば、串に左右対称で二本つければ、「御幣(ごへい)」と呼ばれる神様の依り代ともなる神具になります。
また、神社で御祈祷をあげていただく際には、参拝者が神様へのお供え物として「玉串(たまぐし)」という榊の枝を捧げることが多いのですが、この玉串にも紙垂がつけられています。
神主がお祓いをする「大麻(おおぬさ)」という道具にも、たくさんの紙垂を結びつけた形のものを使う神社も少なくありません。
つまり紙垂は、目には見えない「穢れ」を祓い清めるお祓いの道具であるとともに、しめ縄と組み合わせることで神聖な物や清浄な場所(聖域)を示し、それらを守る結界の役割も担っているのです。
まさしく「神聖さ」を具現化したようなものであることが、お分かりいただけるのではないでしょうか。
そういえば、紙垂の形はジグザグとしていて「稲妻(=かみなり)」に似ていますが、その理由は稲妻が邪悪なものを追い払ってくれると信じられていたからだという説があります。
昔は稲作を行う農家にとって、雷が多い年ほど稲を育てるのに最適な条件(気温や雨量など)がそろうと言われていました。
雷のことを「稲妻」と呼んだり、雷の光を「稲光」と言ったりするのも、雷と稲作の相性の良さを物語っていますね。
そして自然を崇拝する日本古来の神道と稲作も、とても密接な関係であったので、紙垂の形ひとつにもそれが表れているのかもしれません。
紙垂は特別な切り方や折り方で作られており、その作り方にはいくつかの形式や流派があって、実はちょっと奥が深いもの。
神社ごとにその形が受け継がれており、基本的に神主や巫女がすべて手作りしています。
つける場所や物によって大きさも異なり、定期的に交換しているので、日頃から社務所でコツコツと手を動かしています。
それにしても、神社の御神前でひらひらと風に舞う紙垂の姿を見ていると、私は「たとえ目には見えなくても、神様はいらっしゃるんだなぁ」と思う瞬間があります。
それは太陽や風、水や木々など、ありとあらゆる自然の姿であり、ひいては自分自身の心の中にも映し出される存在なのではないでしょうか。
皆様も、どこかで紙垂を見かけたときには、そこは神聖で尊い場所や物であることを、そっと思い出してみてください。
それぞれに、その紙垂の向こう側にいらっしゃる「神様との繋がり」を感じていただけることを願っています。
紺野うみ
巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。
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