5月5日のこどもの日は、五節供の一つとして知られる端午の節供でもあります。
五節供とは、一般的に1月7日「人日の節供」、3月3日「上巳の節供」、5月5日「端午の節供」、7月7日「七夕の節供」、9月9日「重陽の節供」の五つの節供をさします。
その起源は、月と日が奇数で重なる日は厄日であると考えた古代中国の習わしです。それが奈良・平安時代の日本に伝わり、古くからさまざまな厄払いが行われてきました。現在でも七夕やひな祭りのような行事として受け継がれていますね。
伝来当初は貴族を中心とした行事でしたが、江戸時代には庶民にも広まり、賑やかに祝われるようになりました。

江戸時代後期の風俗を記した『東都歳時記』(1838)には、鯉のぼりや兜、武者人形など、今でもこどもの日に飾られる風物が描かれています。鯉のぼりが登場したのは江戸の町だとされ、滝登りをイメージさせる勇猛な姿が縁起の良い飾りとして庶民に好まれ、普及していったようです。

端午の節供につきものの行事食といえば、粽(ちまき)と柏餅でしょう。
江戸時代になってから広まった柏餅に比べると、中国から伝わった粽のほうが歴史は古く、日本でも奈良時代ごろには茅萱(ちがや)という葉で包んだ米粉の生地を蒸したり茹でたりして食べられていたようです。各地に広まる中で、その土地の自然環境に合わせて変化し、笹や葦、竹や茗荷などいろいろな植物の葉で包まれるようになっていったと考えられています。

以前訪ねた福井県越前市では、笹や棕櫚(シュロ)の葉を利用した粽が作られていました。このあたりでは、月遅れの6月上旬に端午の節供を祝う習慣があります。自然に生えている草木を使うため、5月上旬ではまだ葉が十分に育っていないこともその理由の一つです。
前日から、近隣の森の中で葉っぱを採集し、水洗いして清潔な葉を選別するなどして粽づくりの準備を進めます。

まず、米粉にぬるま湯を加えて練った生地を丸めます。次に、6枚ほどの笹の葉を使って包むのですが、初心者にはとにかくこれが難しい。一方、地域の熟練の方々は無駄のない手捌きで、美しい粽を作っていきます。巻き上げた粽は、鍋で茹でて、きな粉をつけていただきます。モチモチの歯ごたえと、笹の葉の青い香り、この季節ならではの、旬の味わいが口の中に広がります。

粽には、古くは別の役割もありました。この辺りの男性たちは、かつては田植えを終えた後に、北関東や東北まで、漆掻きの出稼ぎに行ったのだそうです。その旅の携行食として、粽は重宝されました。固くなっても、茹でなおせばまた柔らかいお餅へと戻ってくれる粽は、長旅の頼もしいお供だったのでしょうね。
取材協力:福井県越前市・もやいの郷
写真提供:清絢

清絢
食文化研究家
大阪府生まれ。新緑のまぶしい春から初夏、めったに降らない雪の日も好きです。季節が変わる匂いにワクワクします。著書は『日本を味わう366日の旬のもの図鑑』(淡交社)、『和食手帖』『ふるさとの食べもの』(ともに共著、思文閣出版)など。
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