稲刈りの季節を迎えました。稲刈りの時期は地域によってさまざまですが、みなさまの地域はいかがでしょうか?
私の手がけている小さな田んぼでは、春は手植え、秋は手刈り、天日干しです。夏には稲の成長を妨げる稗(ヒエ)などの雑草をとったりもします。
大変じゃないですか?とよく訊かれるのですが、たしかに腰が痛くなったり、筋肉痛になったりします。とはいえ、どの作業も一年に一度しかないことなので、久々の作業が楽しくもあり、年々不思議と身体が覚え、手が馴れてくるのがうれしくもあります。
なかでも稲刈りは毎年、大きな喜びと共にあります。一年の苦労がすべて報われて、晴れ晴れとした気持ちになるのが稲刈りという作業です。

生き物との出会い
稲刈りは生き物たちとの出会いが多いことも楽しみのひとつです。

空を舞うたくさんの赤トンボや、同じ行路を行ったりきたりするオニヤンマ。驚いてぴょんぴょんと跳ねるバッタやカエルたち。泥の中をのそのそと歩いているアカハライモリ。畔の草花にはミツバチがいて、稲束には必ずカマキリの卵がついています。野ネズミの赤ちゃんが出てきたこともあります。

昔ながらの田んぼは人と自然が共栄し、多くのいのちを育める豊かな場所です。田んぼはまさに「いのちのポット」。稲刈りはたくさんの仲間たちと共に暮らしていることを体感できる幸せな時間でもあります。これからどんどん寒くなり、彼らにとっては冬眠の季節。そんなことを思いつつ、また来年まで、元気で! そんな気持ちで、共にいる時間を楽しみます。
稲架掛け(はざがけ)
稲架掛けは稲束を二つに割って挟むように掛けることで、はさ、はせ、はざほし、はって、いねかけ、おだがけなど地方によってさまざまに呼ばれていますが、昔ながらの天日干しは台風で雨に濡れたり、稲架が倒れたり、出来具合が天候に左右されるため、近年は刈り取ったらすぐに乾燥にかけるのが主流となり、稲刈りが終わるとすぐに新米が出回ります。

稲架掛けはたしかに時間も手間もかかりますが、刈り取った稲は数週間、太陽を浴びさせることで旨味が増し、逆さに吊るすことによって葉や茎に残っている養分が米粒に集められていきますので、ゆっくりと時間をかけることで後熟(こうじゅく)させるという利点があります。

刈り取ったばかりの稲束は水分を含んでずっしりと重たいので、倒れないようにしっかりハザを組み立てる作業はなかなかの重労働ですが、収穫に勝る喜びはなく、自然に力も湧き、うれしさがこみあげてくる作業でもあります。
刈田
稲刈りが終わった田んぼを「刈田」といいます。刈田もまたまた美しい秋の色で、たわわに実っていた黄金色の田んぼが急にがらんと空いて、秋の空が一層、高く感じられます。
うちの田んぼのある集落では、ほとんどの農家さんが稲架架け(はざがけ)をするので、それぞれの田んぼにずらりと並べられた稲架が静かに秋の陽を浴びて、これぞ日本の実り!と言いたくなるような、美しい光景があちこちに広がっています。

稲刈りが無事に終わった安堵と、感謝を抱きつつ歩く道が刈田道(かりたみち)です。田んぼにはポツポツと切り株だけが並び、乾いていく土の姿も愛おしく感じます。畔では秋草が花を咲かせ、虫の音が響き渡っています。
人が入らなくなった刈田はヤゴやカエルなど、たくさんの小さな生き物が泥にもぐって冬ごもりするほか、鳥たちの大事な餌場にもなります。スズメやムクドリのほか、北方からやってくる冬の渡り鳥たちも舞い降りて、小さな虫や落穂を食べにやってきます。
穭田(ひつじだ)
刈り取って数週間もすると、稲の切り株には青い芽が出てきます。冬を目前に芽吹いても大きくなりようはないのですが、すべてのものが枯れていく中で、必死で伸びようとするたくましい稲の生命力をいとしみ、昔の人はこれを穭(ひつじ)と呼んでいました。穭生え(ひつじばえ)、穭田(ひつじだ)も秋の季語です。
秋収め(あきおさめ)

これは北斎が描いた隠れ里です。たくさんの米俵が積み上げられ、ねずみたちが嬉々として働いています。ねずみは昔から五穀豊穣の神、大黒天のお使いとして祀られてきました。人間たちが見えない地下にはじつは鼠の浄土があって、豊かに暮らしている理想郷、隠れ里があるとされた「鼠浄土」の風景です。
籾摺り
さて、稲は天日干しにした後も、さまざまな工程があります。かけていた稲束をはずして運び出し、稲束から籾(もみ)を落とす脱穀、籾殻を落とす籾摺り、そして精米。稲架も田んぼから運び出し、きれいに片づけます。こうした収穫にともなうすべての作業を終えることを「秋収め」といいます。天と地と水の豊かさが作る日本のお米。今年も手を合わせて、いただきましょう。

文責・高月美樹
写真提供:高月美樹
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