「知る」ことから月見を楽しもう
今年も、月見の季節になりましたね。この日は、月を見上げる人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、国立天文台 暦計算室長の片山真人さんに、そもそも中秋の名月とは何かを教えていただきました。月を愛でるとき、「知る」ことから始めていただくと、一年に一度の月見をより深く楽しめるのではないかと思います。

文:国立天文台 片山真人
現在私たちが使っている暦は、1年の長さを約365日とする、太陽暦(グレゴリオ暦)です。しかし、今から150年ほど前までは、新月を一日とし、1か月の長さを月の満ち欠けで決める、太陰太陽暦(以下、旧暦と表記)が使われていました。
この暦では月の見え方と日付がマッチするので月を見れば日付がおおよそわかりますし、行事の日付に応じて、月の見える・見えないといった情景も連動して定まります。古来より続く文化・風習は必然的に月の満ち欠けに準拠しているといってよいでしょう。

旧暦では一日が新月ですから、月の満ち欠け周期~約29.5日の半分に近い十五日に出る=十五夜のお月さまはほぼ満月ということになります。これは天文学的な意味での満月(望)とは必ずしも一致しませんが、昔の暦には望の情報は載っておらず、十五夜の月が満月と考えられていました。
太陽暦では2023年の中秋の名月は9月29日にあたります。旧暦と太陽暦では1年の長さが違いますから、太陽暦に換算した日付は毎年その分だけ変動します。

中秋の名月を観賞する風習は9世紀ごろ中国より伝来しました。
月見の宴では、たくさんの歌が詠まれ、名月をより楽しむため設計に工夫を凝らした庭園や池も多く残されています。後に、収穫祭的な意味合いも加わり、団子や芋などをいただきながら月を観賞する行事として普及しました。
中秋の名月は、中国では中秋節、韓国でも秋夕と呼ばれる一大イベントとなっています。

中秋の名月(十五夜)と並んで名月と称されるものに、十三夜があります。こちらは旧暦九月十三日に出る月で、日本独自の風習です。なぜ満月でなく十三夜の月を祝うのかについては、延喜十九年九月十三日(919年10月9日)に開かれた月見の宴で寛平法皇が「今夜明月無雙」と発言した程度の記述しかなく、古くから様々な俗説が唱えられてきました。太陽暦では、2023年の十三夜は10月27日にあたります。

さらに、10月29日には、全国で部分月食が見られます。
こちらもあわせてお楽しみください。
片山真人(かたやままさと)
国立天文台天文情報センター暦計算室長。1971年、新潟県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。海上保安庁海洋情報部を経て、現職。おもな著書に『知れば知るほど面白い暦の謎』(三笠書房)『これから見られる 日食と月食データブック』(誠文堂新光社)など。

月を楽しむ、2024年のカレンダー

お月くん卓上カレンダー
暦生活の「お月くん」と一緒に、月や季節を楽しむカレンダーです。
くわしくは「暦生活のお店」から

宙(そら)の卓上カレンダー(黒)
黒地に金銀の月が映える、宙(そら)がテーマの卓上カレンダーです。
くわしくは「暦生活のお店」から

月と暦卓上カレンダー
便利な表面と解説コラムが楽しめる裏面、両面づかいのカレンダー。
くわしくはこちら
宙(そら)の日めくりカレンダー
毎日、夜空を見上げたくなる。宙に親しむきっかけになる日めくりカレンダーを目指しました。