今日は「田毎の月(たごとのつき)」についてお話しします。
「田毎の月」。風流な雰囲気の言葉ですが、どこかで聞いたことがあるでしょうか。田毎の月とは長野県千曲市(ちくまし)にある姨捨山(おばすてやま)のふもとの、小さな水田のひとつひとつに映る月のこと。
大きさや形の異なる水田が美しく広がり、郷愁を覚える姨捨の棚田は、5月末からはじまる本格的な田植えシーズンを前に水が張られ、その時々の空の様子を映し出します。田毎の月も、水が張られたこの時期にしか見ることのできない、美しく幻想的な風景です。

約1500の水田からなるその風景は、国の「重要文化的景観」「日本の棚田百選」に選ばれており、朝、夕、夜、どの時間帯も見惚れてしまう程美しく、この時期は多くの写真愛好家が訪れます。姨捨の棚田からは、善光寺平(ぜんこうじだいら)が見渡せます。かつて武田信玄と上杉謙信が信濃の覇権をめぐり戦った川中島の戦いの舞台です。

姨捨は平安時代から観月の名所として知られ、万葉集にも詠まれています。江戸時代から明治時代にかけて、開田が進むと同時に小さな水田に映る月影が注目を浴びるようになりました。水田に月が移りゆく様子は田毎の月と呼ばれ、松尾芭蕉や小林一茶などの俳人が訪れ、数々の句を残しました。浮世絵師の歌川広重は「信州更科田毎の月」で、水を張った水田のひとつひとつに映る満月を描いています。

絵では全ての水田に月が描かれていますが、実際には月が映る水田はひとつ。田毎の月は、時間とともに月が映る水田が移ろう様子とも、見る者が歩くことで水田から水田へ移る月のことだともいわれています。どちらが正解であろうとも、風情がありとても美しい表現だと思います。

実際にその地へ赴き、自分の目で見ることはまだまだ叶いそうにありませんが、日本にはこのような心安らぐ美しい風景が数多くあり、昔からたくさんの人々に愛されてきたこと、受け継がれてきたことを忘れないようにしたいですね。


暦生活編集部
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