こんにちは。星空案内人の木原です。
“伝統的七夕”という言葉を聞いたことはありますか。今に伝わる七夕の文化は、中国の乞巧奠(きこうでん)が由来と言われています。七夕文化が伝来した時代は月の満ち欠けをもとにした旧暦が使われていたため、旧暦の7月7日にあたる日を旧暦の七夕として「伝統的七夕」と呼んでいます。
毎年、国立天文台が伝統的七夕の日を公表していて、2021年だと8月14日、2022年は8月4日、2023年は8月22日が伝統的七夕の日となります。今の暦では7月7日が七夕ですが、ひと月遅れで旧暦の七夕がやってきます。
今の暦の七夕と伝統的七夕、どちらが正解などではなく、どちらも楽しんでいただけたら良いと思います。織姫と彦星にとっては、年に1回しか会えないと思っていたところ2回も会えるチャンスがあると、喜んでいるかもしれません。
ただ、星空のことを考えると伝統的七夕のほうがおすすめです。今の暦の7月7日は多くの地域で梅雨時期のため星空が見える日が少ないです。一方で、8月は梅雨が明けて晴れた日が多いため、星空が見える日も多くなります。伝統的七夕の方が星空を見るのにはぴったりの時期です。
伝統的七夕の当日の20時頃に南の宙高くを見上げると、こと座のベガとわし座のアルタイルが輝いているのが見つかります。こと座のベガが織姫星、わし座のアルタイルが彦星で、その2つの星の間に天の川が流れています。天の川の明かりはとても淡いため街中で見ることはできませんが、宙の暗い場所に行けば、天の川をはさんで織姫星と彦星が輝いている様子を見ることができます。
ところで、織姫と彦星の2人はどうやって天の川を渡るのでしょうか。泳いで渡るわけにもいきませんよね。実は、伝統的七夕では天の川を渡るための船が用意されています。船の正体は月。旧暦は月の満ち欠けの暦で作られているため、伝統的七夕の日は新月から約7日目の月が必ず夜空に浮かんでいます。ちょうど半月の形になっているので、それを渡り船に仕立てて天の川を渡ることができるのです。今の暦では再現できない、旧暦だからこそ成り立つ素敵なストーリーです。
宙では彦星が月の渡り船を漕いで、織姫のもとに向かっているのかもしれません。月に揺られながら対岸に着くことを楽しみにしている彦星と、だんだん近づいてくる月の船を川岸から見つめる織姫。2人はどんな願いを月の船に託しているのでしょうか。
木原美智子
星空案内人
広島県出身。瀬戸内の宙を見て育ちました。好きな季節は、コスモスが咲き、凜とした空気が漂う秋。宙を見上げるのが好きなので、星だけじゃなく宙にあるもの、宙に関わる文化に興味があります。ペンギンと野球も好き。
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