ぼんやりと夜空に浮かぶ、柔らかな光。
数ヶ月前までははっきりくっきりと見えていたのに、気がつくと霞がかって輪郭がおぼつかなくなっている。空気はしっとりと潤い、艶っぽくさえ見えるような気がする。
春の余韻を慈しみながら照らしてくれるのが、今日のテーマ「春の月」です。

春の月は、秋冬に見える月とは対照的です。
「春霞(はるがすみ)」という言葉があるように、春は霧や霞に包まれ、遠くの景色がぼんやりすることが多くなります。これは、あたたかくなると植物が一斉に芽吹き、水分が蒸発して大気中に放出されることから起こる現象で、そうなると、夜に見える月もおぼろげになります。光の色も、ほのかに橙色をおびたやさしい雰囲気になります。

俳句の世界でも「春の月」は季語として親しまれ、たくさんの歌人が歌を詠んでいます。
中でも印象に残ったのがこの一句です。
「早く、外に出て」という興奮がいまにも伝わってきそうな歌です。
手を伸ばせば「触れるほど」に月を大きく感じたのは、水蒸気のせいでいつもより大きく見えるからでしょうか。
とにかく、今宵はうつくしい月だから一緒に見ようという気持ち、誘った相手への心遣いが感じられる一句だなぁと思いました。

春は「うららか」「のどか」という言葉がぴったり合うように、どこかのんびりとした気持ちになる季節です。身体があたたかさに慣れてホッとするのか、眠くなることも多いです。
私は、都会に住んでいたときや、今でも仕事に追われると1.5〜2倍速で動くことがあります。もともとのんびり気質なはずなのに、アクセルを踏み続けた状態でがんばりすぎてしまうことがあります。

そんなときは半ば強制的に「ぼんやり」を決めます。
ボーッとする時間だけではなく、明るく照らされすぎている足元をぼんやりさせて、自分の感性をなぞりながら歩くのです。
だから「春の月」が見えたときは少しだけ心が落ち着くような気がします。暗闇のなかでポッとろうそくの光が灯ったような安らぎを感じるのです。

よかったら今晩、夜空を見上げてみてください。
春の月がぼんやりと、こちらを見ていると思いますよ。

高根恭子
うつわ屋 店主・ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。
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