和暦研究家の高月美樹です。
今月のかさねの色目は「卯の花」。緑と白の組み合わせです。
新緑がもっとも美しい季節に入ると、俄然、白い花が多くなってきます。白は緑の美しさをもっとも引き立たせる色、といってもいいのではないでしょうか。自然界はまさにそのようになっています。
卯月(新暦では5月頃)という名前の由来どおり、卯の花が咲き始めたら、夏の合図です。卯の花はウツギの花のことで、平安時代にはこのウツギを家の周囲の垣根に用いる風習がありました。真っ白になる垣根です。

卯の花垣(うのはながき)といい、国宝に指定されている有名な志野茶碗の銘としてもよく知られています。卯の花垣は邪気をふせぎ、結界をはる意味もあったようです。近年、生垣の家はほとんどみられなくなりましたが、一度だけ、ぐるりと卯の花垣に囲まれている風流なお家に出くわしたことがあります。初夏はいつも白い花に囲まれている。そんなお家が増えたら、素敵ですよね。

さて、山に入ると、ウツギにはじつにさまざまな種類があることに気づきます。ヒメウツギ、バイカウツギ、ミツバウツギ、マルバウツギ、ガクウツギ、コゴメウツギ、ツクバネウツギなど。すべて白い花ですが、タニウツギとハコネウツギはピンクです。
山の緑がいちばんきれいな頃、白い花が多く咲きます。白い花が咲く樹木は圧倒的に5〜6月に集中しているので、今の季節、森の中は緑と白のオンパレードです。なんの花だろうなと思った人のためにいくつか名前をあげておきます。
ミズキ、エゴノキ、ヤマボウシ、カマツカ、ガマズミ、サワフタギ、ニセアカシア、ナンテン、シロヤマブキ、ズミ、ノイバラ、ヤブデマリ、スイカズラなど。ほかにも色々ありますが、検索の手がかりにお使いください。



ところで、おからで和えた料理を「卯の花和え」といいますが、これは具材を星屑のような小さな白いおからでまぶした姿を卯の花にたとえた料理名です。
おからは食物繊維、ビタミンが豊富。もちろんタンパク質もとれます。ともかく数種類、小さく刻んで入れるのが卯の花和え。シイタケ、ニンジン、コンニャク、ネギなどが卯の花和えの定番でしょうか。近年では乾燥させたおからパウダーが簡単に手に入るようになり、手軽に作れるようになりました。

おからに含ませた出汁の味が、なんともいえず美味しいですよね。手元にある具材で、臨機応変なミックスが楽しめる古きよき一品です。ちょっとコクを出したいときは、シメサバや鶏肉を入れるのがおすすめ。
そして、自然界をそのまま模すならば、小松菜やほうれん草を。緑と白の卯の花和えを食べるとき、ほんのちょっと、今の季節の山の風景を思い浮かべてみてください。日本は見立て、写し、重ねの文化です。
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