和暦研究家の高月美樹です。
今年も田植えが無事に終わりました。苗色は稲の苗のやわらかい萌葱色(もえぎいろ)。苗代を見たことがない人も多いかもしれませんが、こんな色合いです。

これは田植え1週間後のマイ田んぼの風景。まだ弱々しい苗が豊かな水に浸かり、わずかな風にひよひよと震えている姿は、これから始まる日々への、希望に満ちた風景です。

初夏の陽射しを受けた稲の苗は、梅雨の雨を受けて日ごとに成長し、少しずつ色を変えて、「青田」になっていきます。
美しい緑が広がる田園風景は、江戸時代の都会人も大好きだったようです。江戸の街には季節ごとにさまざまな鉢植えを売り歩く棒手振りがやってきて、長屋暮らしの庶民も季節の風物を楽しんでいましたが、初夏の定番といえば「稗蒔き(ひえまき)」でした。

これは小さな稗(ひえ)の苗を稲に見立てた盆栽で、若々しい「苗色」を眺めて楽しむためのものでした。花だけでなく、若い緑の美しさを楽しむ習慣はまた復活してもよいような気がします。
「稗蒔き」は平たい鉢に小さな家や橋、白鷺などの置物を添え、自由にレイアウトできるようになっていました。まさに田園のミニチュア。江戸には地方出身者も多く、白鷺の舞う豊かな田園風景に、遠く離れた故郷を想像して楽しんだのでしょうか。

かさねの色目としての「苗色」は表が薄青、裏が黄。稲の苗のような黄緑、明るい萌葱色です。単色としての「若苗色」も平安時代から「夏の色」だったようです。6月は万緑に包まれるとき。緑が一気に勢いを増すので、草刈りの季節でもありますね。あちこちから草刈機の音が響いてくる季節です。
森の中では多くの草に入り交じって、さまざまな幼樹たちを見ることができます。小さいながらもブナはブナ、ナラはナラ、カエデはカエデの葉をつけて、元気よく芽吹いています。雨上がりの森は一層、緑が鮮やかで、美しくみえます。


その多くは陽当たりが十分に得られなかったり、他の植物に負けてしまったりして年々、淘汰されてゆき、大樹になるのはごく稀なこと。今は屋根のように枝を伸ばし、ザワザワと葉ずれの音を立てている大樹も最初はこんなに小さいのか、と毎度のことながら驚かされます。
大樹は多くの鳥たちを匿い、虫や蝶を養い、苔や菌類を携え、人間や家を強い風から守り、ひとつの見事な生態系を擁しながら、すっくと立っています。「苗色」はそんな幼樹たちの若い色でもあるかとおもいます。大地の小さな苗色にも目をとめて、愛しんでいただければと願います。
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