染織家の吉岡更紗です。私は、京都で200年以上続く染屋「染司よしおか」の六代目で、いにしえから伝わる技法で、植物を中心とした自然界に存在するもので染色をしています。
世界中でも類をみないほど数が多いといわれている、豊かな美しい日本の色。その中から、今月は「常盤色(ときわいろ)」についてご紹介いたします。

2023年を迎え、京都は身体の芯から冷えるような感覚におそわれるほど、とてもとても寒くなりましたが、その寒さゆえ、より空気が澄み、空や雲が綺麗に見え、時には雪がちらちらと降る、個人的には大好きな季節がやってきました。

山や道すがら咲く花は見られなくなる色なき時期ではありますが、古来中国ではこうした季節に「歳寒三友(さいかんさんゆう)」という言葉が使われていました。三友とは松、竹、梅のことで、どの季節にも美しい緑をたたえる松、風雪に耐えてまっすぐに伸びる竹、そして厳しい寒さの中でも蕾を少しずつ膨らませる梅の3つが、色彩の乏しい冬に彩りを添えてくれる友である、と大事にされていました。松は不老長寿、竹は生命力、梅は子孫繁栄の象徴として、日本でも「松竹梅」と、おめでたい象徴のモチーフとして使われています。

その三友の中の1つ、松の葉の色は「松葉色(まつばいろ)」と表現されていますが、その外に「常磐色(ときわいろ)」や「千歳緑(ちとせみどり)」と呼ばれる色名も存在します。松の樹齢は千年を超えると言われていて、常緑樹であり常に葉の色が変わらないことから、不老長寿の象徴とされていました。
また、名前の由来は、神がその木に降りてこられるのを「待つ」からきている、とも言われています。そうしたことから生命力があり、永久不変のシンボルとして長い間尊ばれてきたのです。そのため色名も常に緑を呈する「常盤色」、千年の齢(よわい)を重ねる「千歳緑」と名付けられたのでしょう。

平安時代より、宮中ではお正月初めの子(ね)の日に「小松引き」を行っていました。若松の根ごと引き抜き、その根の長さや太さで今年一年の吉凶を占う遊びで、長寿を願ったとも言われています。京都では年末にその「根引き松」を白い和紙で包み、紅白の水引を結んで、お玄関の右側に雄松、左に雌松を、小正月の1月15日まで飾る習慣が今も残っています。

現代の門松の原型とも言われていますが、松の生命力と共に、地に根付く、成長し続けるという意味合いも込められているようです。
松の葉の色の「常盤」を楽しみながら、皆様にとって本年が更に彩り豊かな1年となりますように。

吉岡更紗
染織家・染司よしおか6代目
京都市生まれ、京都市在住。紫根、紅花、藍などすべて自然界に存在する染料で古法に倣い染織を行う「染司よしおか」の6代目。東大寺二月堂修二会や薬師寺花会式など古社寺の行事に染和紙を納める仕事もしているため、冬から春にかけてが一番好きな季節。美しい日本の色を生み出すために、日々研鑽を積む。
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