染織家の吉岡更紗です。私は、京都で200年以上続く染屋「染司よしおか」の六代目で、いにしえから伝わる技法で、植物を中心とした自然界に存在するもので染色をしています。
世界中でも類をみないほど数が多いといわれている、豊かな美しい日本の色。
その中から、今月は「朱色(しゅいろ)」についてご紹介いたします。

京都のお盆は、旧暦で行われるため8月13日からはじまり16日に終わります。お迎えしたご先祖のおしょらい(精霊)さんを、8月16日に大文字の送り火でお見送りをします。毎年、送り火の炎を見て、赤の色の力強さ、鮮烈さを改めて感じています。
さて、数多ある日本の色の名前のなかで、最初に認識したものは「アカ」と「クロ」の2つであったと考えられています。太古の時代、現代と違い、電気のない生活を送っていた頃、人間の生活の営みは太陽が昇っている間に限られていました。日が昇ることで夜が明ける、その「明ける」という言葉から「アカ」という言葉が生まれ、日が暮れるの「暮れ」から「クロ」という言葉が生まれました。
また、その時代、人は火をおこすということも発見し、それによって狩猟採集した食料を調理することや、身体を温めるということ、そして闇夜を明るくすることを可能にしました。この火の色もまた、赤であり、そして人間の体内を流れる血液も赤です。「太陽、火、血」この3つが、人間が生きるために必要な赤であり、また神聖な色であるという風に考えられていました。

弥生時代に記された『魏志』倭人伝には、邪馬台国について記述があり、「朱丹(しゅたん)を以ってその体に塗る。中国の粉(ふん)を用いるが如し。」「真珠・青玉(せいぎょく)を出だす。その山には丹(に)あり。」と記されています。丹とは朱の原料となる硫化水銀のことで、中国でおしろいを体にぬるように、邪馬台国に暮らす人は朱を体に塗っていて、またその原料は山にあると書かれています。

いまだ邪馬台国がどこにあったのか、様々な説がありますが、近畿内にもしあったとすると、奈良県吉野山はかつて朱を豊富に持っていた地域でした。周辺には、丹生川とよばれる川が流れ、当時朱を採取したであろうと考えられる場所に、丹生神社、丹生川上神社など、丹生という言葉のつく神社が数か所存します。

植物から色素を汲み出し、染めるという技術がまだ伝わっていなかったこの時代には、朱や弁柄などの顔料から赤い色素を取り出し、塗ることで色を表していました。自身の体に塗ることに加えて、土器や土偶にも朱が施されているものが見つかっています。また、死者の再生を願ってその遺骨に朱を塗ったり、墳墓の内壁に塗ったりしているような遺跡も発見されています。赤に畏怖と畏敬の念を感じながら、祈るような気持ちで彩色していたのでしょうか。
赤は人間の生命を司る色なのです。

吉岡更紗
染織家・染司よしおか6代目
京都市生まれ、京都市在住。紫根、紅花、藍などすべて自然界に存在する染料で古法に倣い染織を行う「染司よしおか」の6代目。東大寺二月堂修二会や薬師寺花会式など古社寺の行事に染和紙を納める仕事もしているため、冬から春にかけてが一番好きな季節。美しい日本の色を生み出すために、日々研鑽を積む。
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