和暦研究家の高月美樹です。
今日は七十二侯「蚯蚓出(みみずいずる)」についてのお話です。
私はミミズをみると、ここは豊かな土壌なのだな、とうれしくなります。
ミミズが土を耕すことはかなり古くから知られていたようで、日本では「自然の鍬(くわ)」といわれてきました。生物学に精通していた古代ギリシャのアリストテレスはミミズを「大地の腸」と名づけていました。
英語名はearthworm。「地球の虫」です。

進化論で知られるダーウィンは晩年のすべてをミミズの研究に捧げ、ミミズがいかにして土壌を作るかを長年にわたって観察し、無機質な石の上にミミズを飼って数年もすると何センチも土ができていくことを確認しました。
春に孵化するミミズは、夏になると本格的な活動期を迎えます。雨の後などに道路に出てくることがありますね。ぼやぼやしていると鳥に見つけられて、食べられてしまうミミズさん。
ミミズは腐葉土を食べ、窒素やリンを含んだ栄養豊富な糞を排出しています。その糞は小さな微生物たちの格好の住処となり、さらに分解されていき、肥沃な土を作ります。健康な土には1グラム中に1億もの微生物がいるといわれています。土は生きているんですね。

またミミズ自身が動き回ることによって、土中にはしっかり酸素がゆきわたり、通気性や透水性がもたらされます。鍬を入れなくても、ふかふかの土を作ってくれるミミズの効果は絶大なのです。
ところで、東京の武蔵野で育った私は小学生の頃、なぜか雑木林を歩いていたカメを拾ってきて、庭の小さな池で飼っていたことがあります。

カメは毎年庭の隅で冬眠し、春になるとまた地上に出てきては池に浸かって過ごし、毎年どんどん大きくなっていきました。
庭の土をちょっと掘ればミミズがすぐ見つかるので、私はよくミミズを見つけて、割り箸でつまんではカメにあげていました。今ではなつかしい思い出ですが、この土は武蔵野台地特有の黒ぼく土で、植物の育成や畑に適した団粒構造のやわらかい黒土です。かなり豊かな土であったことを知ったのは、大人になってからでした。
「草も木も持ちたる性のままにして よく育つるを真土といふ」 ——『会津歌農書』より

最後に、美しいミミズの写真を添付します。昨年のちょうど今ごろ、宇和島で出会ったミミズです。
通称カンタロウ。四国や九州に棲息するヤマミミズで、学名はシーボルトミミズ。先日のシュレーゲルガエルと同じく、江戸時代にシーボルトが持ち帰って名付けられた日本の固有種です。関東育ちの私はこんなミミズがいるのか、と驚きました。体長40センチはあろうかという巨大ミミズ。動く度にメラメラとコバルトブルーが動く様子に、しばしみとれました。

ミミズは自然の鍬。大地を耕し、微生物が豊富な土を作る縁の下の力持ちです。気持ち悪いと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、どうかその役目を知って、優しく見守ってあげてください。
※七十二候(しちじゅうにこう)は、日本の1年を72等分し、季節それぞれのできごとをそのまま名前にした、約5日ごとに移ろう細やかな季節です。
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