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鴻雁北こうがんかえる

二十四節気と七十二候 2021.04.10

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春の初めの歌枕、霞たなびく吉野山、うぐいす佐保姫、翁草、花を見捨てて帰る雁 『梁塵秘抄』

春らんまんの季節を迎えると、ついつい口ずさみたくなる『梁塵秘抄』の今様歌です。
「はるのはじめのうたまくら かすみたなびくよしのやま うぐいすさほひめ おきなぐさ はなをみすててかえるかり」

翁草(おきなぐさ)

いかがでしょうか。今様は当時の流行歌で、どのような節をつけて歌われたのかはよくわかっていませんが、ただ声に出して読むだけでも美しいリズムの日本語であり、春の歌枕のオンパレードです。

春霞立つを見捨ててゆく雁は 花なき里に住みやならへる 『古今和歌集』

ちょうど百花繚乱の晩春を迎える頃、北をめざして飛んでゆく雁たち。「花を見すてて帰る雁」は、自然界の循環を象徴するモチーフとしてしばしば歌に詠まれてきました。

雲のうへに行通ひても音をぞ鳴く 花咲くときに逢はぬ雁がね 藤原俊成

「鳥曇り」は晩春の季語で、雁たちの渡りをかくすような曇り空。雁の群れがきれぎれに雲の中に消えていったり、雲の中から声だけが聞こえたりすることはよくあったのでしょう。こんなに美しい花々が咲く季節に、それでも雁は行ってしまうのか、と多くの歌人が詠み、春の別れを惜しんで、人々が見上げてきた曇り空です。雁そのものは秋の季語ですが、帰雁(きがん)、帰る雁、行く雁は春の季語になっています。

かつてマガンは日本全国に飛来していましたが、現在、マガンの姿をみることができるのはごく一部の地域に限られています。最大の越冬地は宮城県北部の蕪栗沼と伊豆沼で全体の80パーセント。秋田県の八郎潟や小友沼が中継地として知られています。

雁は明治以降に行われた乱獲と湖沼や田んぼの消失によって、7種類いた雁の内、シジュウカラガン、ハクガン、カリガネ、サカツラガンはほぼ絶滅し、1971年に生き残ったマガンとヒシクイの捕獲を禁じて天然記念物に指定されました。マガンは調査当時わずか3700羽となり、まさに絶滅寸前という危機的な状態でしたが、現在は20万羽まで回復しています。

マガン

渡り鳥の減少は世界的にみられ、国を超えてさまざまな連携がとられ、環境保護や放鳥が行われています。マガンだけでなく、かつて日本にまったく来なくなっていたシジュウカラガンやハクガンも国際協力による長年の努力が実り、現在は数千羽まで戻ってきているそうです。

雁が減少した大きな理由は、日本の湖沼が大量消失したことです。日本の湿地面積は明治・大正時代までは2100km2ありましたが、現在は約800km2に激減しています。かつてあった池や沼の多くが埋め立てられ、用水路や河川も消えていき、彼らが生息できる環境がなくなってしまったことに加え、マガンは夜は湖水で眠り、夜明けとともに周辺に飛び立って水田の落ち穂や雑草を食べるため、生息するには近くに田んぼがあることが条件となっています。

水鳥の生息地として重要な湿地を保全する「ラムサール条約」に指定されているのが蕪栗沼とその周辺の水田で、周辺の農家さんの協力と地道な取り組みにより、水鳥たちのために「ふゆみずたんぼ」が行われてきました。「ふゆみずたんぼ」によって微生物や生き物がふえ、トロトロの土壌になると雑草の発生を抑えます。さらにそこにやってくる鳥たちのフンはリン酸を含んだ良き肥料となり、雑草や種もしっかり食べてくれます。この水田は2005年、世界で初めて湖沼以外で「ラムサール条約」に登録されることになった珍しい水田で、2017年には人と鳥が共生できる理想的な田んぼとして「世界農業遺産」に登録されています。

蕪栗沼(かぶくりぬま)

私はこの地域で「ふゆみずたんぼ」を推奨し、生物多様性を研究している岩渕成紀氏に蕪栗沼のモーニングフライトに連れていっていただいたことがあります。

マガンのモーニングフライトを見ることができるのは夜明けです。本格的な渡りが始まる前の冬の早朝、まだ暗いうちに出発し、日の出を待ちます。しびれるような寒さの中、太陽が空を赤く染め始めると、静まりかえっていた湖面に「おはよう」「おはよう」といっているかのような小さな鳴き声が始まります。

その声は次第に高まっていき、「もう行きますよ」「準備はいい?」「ちょっと待って」「もういいよ」と言い合うかのようにどんどん激しくなって、ある瞬間、数千、数万のマガンたちが口々に叫びながら、一斉に飛び立ちます。空は右も左も、真上もすべてマガンで覆われ、ものすごい音量に包まれます。

よくみると、飛んでいく方向はさまざまです。向かう場所は群れごとに違っていて、交差してぶつかりそうになりながら飛んでいきます。マガンは仲間意識が強い鳥で、さかんに叫んでいるのは連絡をとりあうため。このとき人が歓声をあげたり、物音を立てたりすると、仲間の声が聞き取れなくなったり、驚いたりあわてたりして方向がわからなくなり、仲間とはぐれてしまうのだそう。マガンの聖地にお邪魔している人間は、必ずルールを守っての見学です。

その後、日が昇ってから車で周辺の田んぼを回ると、マガンは田んぼのあちこちに点々と散らばって、雑草や種をついばんでいました。マガンが全国に広がらず、蕪栗沼や伊豆沼に集中してしまうのはほかに適した湖沼と水田がないため。飛来数が増えているのは喜ばしいことですが、過密になりすぎていることが懸念されています。

伊豆沼(いずぬま)

雁が渡りを開始するのは2月〜3月上旬ごろですが、近年は温暖化の影響で、秋は以前より遅く飛来し、春は以前より早く旅立つ傾向があり、滞在期間は短くなっているそうです。七十二侯の「鴻雁北(こうがんきたへかえる)」は4月10日〜14日になりますので、実際には雁というより、鴨類の渡りの時期と考えていただければとおもいます。鴨たちは雁より遅く4〜5月頃に北に帰ります。

鴨は全国で身近にみられる鳥です。わが家は川沿いですので、時々、真夜中にグエッグエッと鳴きながら空を飛んだり、川で騒いだりする声が聞こえくることがあります。水鳥のいる風景はいつみても心和むものです。緑の鮮やかな頭のマガモを始め、コガモ、ヨシガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、キンクロハジロなどが比較的よくみかける鴨類です。私はオシャレで美しい配色のオナガガモが好きです。みなさまはいかがでしょうか。

ヨシガモ
オナガガモ

帰る雁田ごとの月の曇る夜に 一茶

文責・高月美樹

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高月美樹

和暦研究家・LUNAWORKS代表 
東京・荻窪在住。和暦手帳『和暦日々是好日』の制作・発行人。好きな季節は清明と白露。『にっぽんの七十二候』『癒しの七十ニャ候』『まいにち暦生活』『にっぽんのいろ図鑑』婦人画報『和ダイアリー』監修。趣味は群馬県川場村での田んぼ生活、植物と虫の生態系、ミツバチ研究など。

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