七十二侯では「蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)」を迎えました。

梅雨となり、青や紫の花が多くなってきました。紫陽花もつぼみをつけています。

卯月(現在の5月頃)の別名は夏の初めの夏初月(なつはづき)、薔薇の香りが漂う清和月(せいわづき)、田植えをする植月(うえづき)の他、今はあまり使われなくなった木の葉採月(このはとりづき)があります。
この木の葉は桑の葉のことで、蚕に食べさせる桑の葉を摘むのに忙しかったためです。何度か休眠を繰り返しながら成長した蚕が、最後に猛然とした食欲で桑の葉を食べると、いよいよ糸を吐いて繭を作り始めます。かつて絹は、日本の重要な産業のひとつでした。農家は蚕の世話と田植え、そして地域によっては麦の収穫も重なって、猫の手も借りたいほど忙しい時期でした。
蚕は新鮮な桑の葉しか食べず、夜中でも食べ続けます。食欲旺盛な蚕たちを満足させることは繭の出来にも影響するため、桑の葉を採ることは大事な作業でした。「猫の手も借りたい」という言葉はここからきており、猫は大切な蚕をねずみから守ってくれるため、猫を貸し借りすることもあったようです。猫の手は役に立たないものの例えになっていますが、かつては居てくれるだけで十分役に立っていたのです。

絹は莫大な利益を生み出し、繁栄をもたらしました。日本の養蚕は江戸時代から全国で行われていましたが、もっとも盛んだったのは大正から昭和初期。日本の輸出の主力製品は絹で、世界市場の6割を占めていた時代もあります。日本製の品質のよい絹は「ジャパンシルク」と呼ばれ、高値で取り引きされていました。

絹は繁栄の証であり、長い年月、つねに蚕のそばにいて大事にされていた猫にも、福を招くイメージが重なっていきました。絹産業が衰退した後、商売繁盛の縁起物となったのがまねき猫です。
卯月の七十二候には「蚕盛んに桑を食む」の他にも、「紅花栄う」「麦の穂実る」など、かつての重要な産業に関わる言葉が盛り込まれています。「麦秋」も卯月の異名です。
「蚕時雨(こしぐれ)」という言葉があります。蚕が桑の葉を食べる音のこと。静かに小雨が降っているような、サーッという心地よい音です。そんな静かな雨が降ったら、新緑から滴り落ちる青時雨(あおしぐれ)を眺めつつ、蚕が葉を食べる音はこんな音かな、と想像してみてください。
この時期に旬を迎えるそらまめは、細長い豆の莢(さや)が蚕の姿に似ていることから「蚕豆」と書きます。

文責・高月美樹
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