霜始降しもはじめてふる

二十四節気と七十二候 2021.10.24

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七十二候では「霜降」の初候「霜始降(しもはじめてふる)」に入りました。このところ急激に冷え込んで、なんと東京は12月中旬並みの寒さとか。思わず暖房をつけ始めた方も多かったのではないでしょうか。

とはいえ霜が降りるのは気温が3度以下、地表が0度以下になってからなので、まだ霜が降りるほどではありません。今年の帯広の初霜は10月17日だったそうです。霜が降りる平年日は札幌で10月25日、仙台で11月10日、大阪で12月5日、東京が12月23日です。

霧と同様、霜も都市化や温暖化の影響で、昔よりだいぶ遅くなっているようで、東京も1世紀ほど前までは10月に初霜を迎えていた年もありましたが、1970年代以降は12月が中心となり、霜が降りる期間もどんどん短くなってきています。

もはやアスファルトに囲まれた都心で霜を見ることはかなり少ないわけですが、寒い地域では雪が降り出し、山の大地では霜が苔や枯れ葉をうっすらと包んでいます。ですので、二十四節気の「霜降」は想像力で、遠くに生きるいきものたちを思いやる季節と思っていただければとおもいます。急速に冷え込みが増す中、森の動物たちはせっせと冬ごもりの準備をしていることでしょう。

森の中を歩くと、かわいい豚の鼻のような胡桃の殻がまとまって落ちている場所があります。胡桃の木からは離れているのですが、ここへ持ってきたのはリスたち。その場所が安全で、気に入っているのでしょう。私はそういう場所を「リスの食卓」と呼んでいます。実際に食べている瞬間は見られませんが、その痕跡から彼らの暮らしを想像することができます。

リスの食卓、右は栗をネズミがかじった跡です。

クマもミズナラやコナラのドングリをせっせと食べて、冬ごもりに備えるころです。晩秋の森歩きはクマと遭遇する可能性があるので気をつけなければいけませんが、すっかり葉が落ちたころにはクマと出会う危険もなくなり、樹上にはあちこちにこんな熊棚が見られるようになります。

クマは枝を折りながら木の実を食べ、食べ終えた枝をお尻の下にどんどん敷いていくので、その枝は葉をつけたまま枯れ、居心地のよいベッドのように樹上に残っています。昨年はドングリが全国的に不作で、クマが人里に降りてくる事件が多発しましたが、今年はようやく豊作のようです。十分にお腹を満たして冬眠できることを遠くから祈るばかりです。

人間にとっても収穫物の多い季節。うちではようやく稲刈りを終え、天日干しに入りました。天日干しにすることで茎の栄養が穂先に降り、美味しくなるのだそうです。この後、脱穀や籾摺りなどの工程を経て、実際に食べられるようになるのは11月からになります。

周辺の農家さんを訪ねると、落花生や豆類の収穫していました。

山では胡桃のほか、天然のなめこ、まいたけなど、森の恩恵に預かれるときでもあり、独特の香りが美味しいくりたけもご馳走になりました。

山里からのお土産をさす言葉として、山苞(やまづと)という美しい季語があります。昔なら藁づとに包んだり、籠に入れてもたせたりしていたものですが、今ではすっかり現代風に。柿、秋ナス、サツマイモなど、それぞれにあれやこれやともたせてくださる里山のお土産たち。恵みの晩秋です。

不安定なお天気は今月末で回復し、11月は晴天が多くなり、例年よりあたたかい1ヶ月になるとの予報です。身体を寒さに慣らしつつ、あったかいお布団や、あったかいセーターの感触を大いに楽しみ、熱々の料理を食べましょう。

文責・高月美樹

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高月美樹

和暦研究家・LUNAWORKS代表 
東京生まれ、三鷹育ち。好きな季節は、初夏の清和と、胸がキュンとする晩夏。趣味は、田んぼ生活・植物と虫・ミツバチ研究。専門分野は和暦文化。『和暦日々是好日』発行人。

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