手づくり二十四節気「立冬(りっとう)」

二十四節気と七十二候 2021.11.07

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「あったかいものがうれしい季節」

冬の始まり、立冬です。さすがに気温も低くなりましたね。これから三ヶ月ほどは、暦の冬が続きます。山茶花の花が咲き始めたのを目にすると、冬の到来をあらためて実感する思いです。

寒い季節にうれしいのは、やはりあったかい食べ物や飲み物。我が家では、これからは一人用の小さな土鍋が大活躍です。鍋焼きうどんやお粥をつくったり食べたりするのにぴったりで、重宝します。もちろん鍋物も。お夕飯に寄せ鍋をして、そのあとうどんを入れれば完璧。満腹満足、体も温まっていうこと無しですね。

さて、その土鍋を食卓に置くには、やはり鍋敷きが必要です。今まで使ってきた鍋敷きも気に入っていますが、ちょっと自分で作ってみようかな、と。

作るといっても、そこらへんにあったちょうどいいサイズの木っ端を持って来て、チョイチョイと彫刻刀で彫って模様をつけただけですが。木っ端は、日曜大工が好きだった父の遺したもの、彫刻刀は、鎌倉彫をしていた母が使っていたものです。両方とも、「押し入れのあのあたりにあったな」と記憶をたどって見つけました。

彫刻刀を持ったことなんて、何年ぶりだったでしょう。が、彫り始めるとこれが面白い。使ったのが正方形の木片だったので、最初に定規で対角線にバツを引いて、あとは下書きなしのアドリブ彫刻。

なんとなく頭の中にあったのは、以前住んでいた家の壁に使っていたメキシコのタイル。手描きで施された絵付けに温かみがあって味わい深く、しかもなかなかのデザインセンスでした。あの感じでこの鍋敷きもいってみよう、と。

真ん中にお花、次は角にもお花、中間が寂しいからここにもお花を、とどんどん彫っていると、もう止まらない。彫っていると削りかすがどんどん机の上に広がって、それもなんだか「作業をしている」感が増して気分がさらに盛り上がります。

二十分ほど彫ったでしょうか。このくらいにしておこう、と彫刻刀を置きました。最初はのっぺらぼうの板切れだったのに、いまや自分が彫った模様の鍋敷きが出来上がっているではないですか。できたてホヤホヤの鍋敷きを、ためつすがめつ。よし、この冬はこの鍋敷きで鍋焼きうどんをたくさん食べるぞ。

どうにも「鍋敷き熱」が冷めないため、もう一つ、もっと簡単な鍋敷きを作りました。台所の引き出しに溜まっていたかまぼこの板を引っ張り出してきて、釘付けのみのシンプル鍋敷きです。これは、石油ストーブにかけたやかんをちょっと下ろす時に使うためのもの。かまぼこ板は、なかなか捨てられずに引き出しに増える一方でしたが、ようやく四枚使えてホッとしたところです。

どちらも塗料は塗らずに木の肌のまま。熱に強い塗料を塗るのもよさそうですが、手元にありません。というわけで、今回はこのままで完成です。この冬は、この自作彫刻鍋敷きを使いたいがため、土鍋を使う機会もさらに増える予感がしています。

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平野恵理子

イラストレーター、エッセイスト
1961年静岡県生まれ。著書に『五十八歳、山の家で猫と暮らす』『歳時記おしながき』『こんな、季節の味ばなし』ほか多数。好きな季節は、季節の変わり目。現在は八ヶ岳南麓在住。

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