節気は立冬から小雪に入りました。遠くに聳(そび)える山々を眺めれば、頂は粉砂糖をかけたように白くなり、木の葉ははらはらと散り始め、いよいよ冬なのだ、という実感が増してくるころではないかとおもいます。

七十二候では、第五十八候「虹蔵不見(にじかくれてみえず)」となります。この候は第十五候「虹始見(にじはじめてあらわる)」(4月15日ごろ)と対になっています。
第十五候でも書きましたように、虹に虫篇がついているのは空の蛇、龍の化身と考えられていたためです。龍は雨をあやつり、大地を潤す豊穣のシンボルでもありました。干ばつのときに龍神を祀って雨乞いの祈祷が行われてきたように、龍は稲作や農耕と深く関わっています。時には荒れ狂って氾濫を起こし、災害をもたらすこともあり、そうした荒々しさも龍のイメージと重なっていたのでしょう。

田んぼを中心とした農耕民族である日本人にとって空にかかる虹を、水の神として見たのは当然かもしれません。実際に虹は空中に浮かぶ水滴に太陽が当たることで生まれる光のプリズムであり、火と水の神遊びです。

虹は春の田植えの準備が始まるころに見えるようになり、田んぼの片づけがすっかり終わるころ、見えなくなります。そのため春の「龍天に登る」と対になる言葉として、「龍淵に眠る」という言葉があります。冬の龍は水の底に潜んで、静かに眠りにつくというわけです。
実際に冬に虹が出ることは少なくなりますが、出ても淡かったり、短時間で消えてしまったりすることから、ものわびしさをともなう季語として「冬の虹」という言葉もあります。

この写真は以前、サツマイモの収穫をしていたときに現れた虹です。大きく、見事な虹でした。日付をみると11月23日でした。
今日、11月23日は勤労感謝の日。そのルーツは新嘗祭です。戦後のGHQ政策によって国家行事と切り離すために「勤労感謝の日」と改名され、神事とは切り離された祝日として今日に至っていますが、和暦(太陰太陽暦)を使っていた明治5年まで、新嘗祭は旧暦霜月の第二卯の日でした。日本が和暦から西暦(太陽暦)に切り替わった年の第二卯の日がたまたま11月23日だったため、そのまま固定されて今日に至っています。

現在も伊勢神宮の新嘗祭は重要な宮中祭祀として厳粛に行われていますが、一般の人々からは遠くなってしまいました。かつては人々がこぞって新穀を食し、感謝の祈りを捧げる日でした。
そして農家さんにとっては一年の苦労がねぎらわれる日であったわけですが、大地と離れた暮らしをする人が多い現在は「食」や「いのち」への意識が薄れてしまったようにおもいます。
11月23日はお米を作って下さった方々に感謝する日、そしていのちを支える食べものに感謝を捧げる日として各家庭で、静かに祝う。そんな習慣が復活していくといいなあと思っているのですが、いかがでしょうか。
これは私がお送りした新米をメインディッシュにしたという男友達の食卓です。いかにご飯をおいしく食べるか、だけを考えたとのこと。

いのちに感謝するための食事は、決して豪華なご馳走ではなく、こんなふうにできるだけシンプルにするのがよいようにおもいます。
「私は今 命をいただく機会を得ました。
ただ空腹を充たすだけの食事ではなく、
皆等しく清らかな境地を味わえますように」
この言葉は、懐石を通していのちと向き合う作法を教えている中尾英力先生から教わった祈りの言葉です。いつもよりつつましく、一汁一菜のシンプルな食卓をととのえ、食事の前に口に出して唱えてみてください。
文責・高月美樹
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