ラップトップパソコンのキーボードをカバーするチビすのこ
三月三日の雛祭りも終わって、啓蟄です。
地中で冬ごもりをしていた虫たちも目を覚まして地上に出てくる頃。
たしかに気がつけば、ずいぶん日足が伸びました。陽射しもどことなく柔らかく、春を感じさせます。
と、陽射しに騙されやすいのが三月の怖いところではあります。

さて、日によっては部屋の中も暖かいので、小さいストーブで過ごしていますが、すると同居している猫が訴えます。
「このストーブじゃ寒い」 と。
わかりました、とばかり寒冷地仕様の巨大ストーブにスイッチするのですが、このタイミングを逃すとやられてしまうのがキーボード上陸。
どうして猫はパソコンのキーボードが好きなのでしょう。隙を見てはここに来て箱ずわりしています。暖かなのがいいのでしょうか。それともうひとつ、きっとラップトップの画面が屏風のようで安心なのかもしれません。

実害がなければいくらでもキーボードの上でくつろいでいただいてもいいのですが、電源が入っている状態で乗られると非常に困ります。とんでもないキーを押されてファイルがどこか奥深いところへしまわれてしまったり、ファイルの名前がまるで違う名前になっていたり。原稿のデータを消されたことも一度や二度ではありません。
猫が我が家にやってきた五年前からの悩みで、キーボードをロックする方法を探しましたが、これは見つからず。キーボードにかぶせる小さなすのこみたいのがあるといいな、と思って探しましたが、なかなかちょうどいいものは売ってないのですね。
そんなわけで、猫がパソコン近くにやってくると「あっち行け」とばかり押しのけたり抱き上げて遠くへ置いてきたりしますが、それでも飼い主よりすばしこい猫は、いつの間にかいつものお気に入りの場所でのびのび寝ています。
とうとう意を決しました。自分ですのこを作ろう、と。
ちょうどいい寸法を測ってホームセンターへ行き、よさそうな角材を寸法どおりに切ってもらいました。すぐにホームセンターへ行けばいいのに、作り始めるのに五年かかったとはこれいかに。
ともあれ材料が揃った。で、まずは甲斐甲斐しく紙やすりで材の表面を滑らかに仕上げます。最初は中目、次に細めの紙やすりですっかりスベスベ。材の角もそこはかとなく取れて、手ざわり極上です。
脚にする材に鉛筆で薄く印をつけて、いよいよ接着に突入です。すのこに乗っかるのは猫だけだし、重いものを支えることはないので、釘は打たずに木工用の接着剤で組み立てます。
そうっとそうっとずれないように、脚になる材を文鎮などで固定しておいて、一本ずつのせて接着していきました。

一晩おいて、無事完成です。軽くてきれいで手触りもよし。こんなにいいすのこができるのだったら、なぜもっと早くつくらなかったのでしょう。
が、ビビリ猫は見慣れないすのこには未だディスタンスを置いております。一度飼い主に「乗ってごらん」と乗っけられたときはしばらくすわっていましたが、自分から乗ったことは皆無。とはいえ、あったかくなるころには慣れて、すのこの上でのびのび寝ていることでしょう。


平野恵理子
イラストレーター、エッセイスト
1961年静岡県生まれ。著書に『五十八歳、山の家で猫と暮らす』『歳時記おしながき』『こんな、季節の味ばなし』ほか多数。好きな季節は、季節の変わり目。現在は八ヶ岳南麓在住。
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